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「お口の供」になったグミ 歯科医「ガム代わりはリスク高い」

毎日新聞 2024年6月29日 14時0分

 果汁などをゼラチンで固めた独特の食感が人気のグミ。2021年、ガムの売り上げを追い越し、リフレッシュ時の「お口の供」の代表格となった。ただ、甘酸っぱく独特の食感から、つい食べ過ぎてしまう「グミ依存」には注意が必要だ。

市場規模は972億円

 東京都心のコンビニでは、菓子コーナーに果汁入りや季節限定など30種類以上のグミが並ぶ一方、ガムは棚の最下段に追いやられている。調査会社「インテージ」によると23年、グミの市場規模は販売金額ベースで前年比24%増の972億円となった。

 減少傾向だったガムとの差は400億円近くに拡大。購入者は、従来の子供に加え、出勤時の気分転換や小腹満たしを目的とした社会人が増えたという。新型コロナウイルス禍の20年から急伸しており、インテージは「ガムのように食べ終わった後のゴミが出ない衛生面も選ばれる理由の一つ」と分析する。

虫歯になりやすいお菓子

 グミはドイツ発祥で、子供のかむ力を強化するために作られた菓子だ。パッケージに「コラーゲン配合」「ビタミンCたっぷり」などの文言が並ぶこともあり、ポテトチップスやチョコなどより健康的な食べ物のように感じる人は少なくないだろう。

 だが、「お砂糖博士Ⓡ」として歯と体の健康を研究・発信している歯科医の新美寿英さんは「グミは非常に虫歯になりやすいお菓子の一つ。ガムの代わりとするには、リスクが高い」と指摘する。

 市販されているグミの主な原材料が砂糖と水あめで、これらはほぼ糖類だ。世界保健機関(WHO)は大人の糖類の摂取量について、1日当たり25グラムを目安としている。グミ1袋は、この倍近くにのぼる。

 また、コンパクトでジップ付きのグミは暑い夏でもべたつかず、ダラダラと食べてしまいがちだ。粘着性があるため、食べかすが残りやすいこともあり、歯の表面が酸にさらされる時間が長くなり、虫歯になりやすくなる。

 新美さんはグミについて、「かむことで脳の活性化や消化の促進につながるため体に良い面がある。一方で、糖分と酸味料のダブルアタックは歯に悪影響を及ぼす」と解説する。

ハードタイプにも要注意

 「かみ応え」を求める消費者の声を受け、最近はハードタイプのグミも人気だ。この強い「弾力」も要注意だという。強く何度もかむことにより歯の表面が強くこすれてすり減る「酸蝕症」や歯がしみる「知覚過敏」を招くともされる。

 JMR生活総合研究所の調査によると、かむ菓子として、ガムの頻度が減った人の25%は、グミの頻度が増えていた。ガムを好む年代は幅広い一方、グミは20~30代が好む傾向が強く、ガムよりも「普段から歯の健康を気にしている人」の割合が低かったという。

 新美さんは、口さみしい時にかむものとして、代替甘味料キシリトールを使ったシュガーレスのガムを勧める。唾液の作用などで虫歯や歯周病を予防する効果があるという。

 日本歯科医師会も、歯科保健の向上につながる商品として数種類のシュガーレスガムを挙げている。ただ、この中にキシリトール入りのグミは含まれていない。市販されている商品には砂糖も含まれているためだ。

 どうしても「ガムよりグミ」派は、歯科医院専売品のキシリトール100%グミという選択肢もある。ただ、キシリトールは一度に食べるとおなかが緩くなりやすく、食後の歯磨きが不要になるわけではないので注意が必要だ。

 ガム市場は、健康志向の高まりとともに1990年代後半に登場したシュガーレスタイプが主流になった。グミでもシュガーレス化が進むのか。新美さんは、砂糖が主原料のグミは原価が安く利益幅も大きいとし、「各社が商品開発にしのぎを削る中、砂糖より高い原料による商品開発はすぐに進まないのではないか」とみる。グミ好きの人たちには「好きな物が食べられないのはつらいので、摂取のリスクや限度を理解して、嗜好(しこう)品として楽しんでほしい」とアドバイスする。【稲垣衆史】

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