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7月は都内の寄席がおもしろい 桃花三十一夜、歌丸さん追善など

毎日新聞 2024年7月1日 7時30分

 「寄席で落語を聞いたことがない」。そんな初めて足を運ぶ人にも楽しめる演目が7月、東京都内の4軒の寄席にそろう。「おじいさんが演じておじいさんが見る」のは昔の話。寄席では若い世代の演者が若い世代の客を待ち構えている。スマホのスイッチを切って、涼しい寄席でひとときを楽しんでみてはいかが。

前代未聞、午後9時からの独演会

 池袋駅北口から徒歩1分の好立地にある池袋演芸場は、定員100人弱で演者を間近に楽しめる。7月は若手真打ち、蝶花楼桃花(ちょうかろうももか)さんが、夜の部が終わった後の午後9時から、31日間連続独演会「桃花三十一夜」に挑む。

 桃花さんは春風亭小朝さんの弟子で、2022年に真打ち昇進したばかり。テレビのコメンテーターとしても活躍し、「笑点の新メンバーでは?」とも騒がれた。

 「寄席は昼席と夜席があるけれど、他の時間帯も使えないだろうか」と、前代未聞の企画を提案し、協力を得た。

 毎日2席のうち1席は「ねたおろし」、つまり習得したねたの初披露を自分に課す。一挙にねたを31も増やそうというのだ。

 「自分が先輩から育ててもらったように」と、真打ちを目指す二つ目31人が日替わりゲストとして登場する。「若手落語家を知ってほしいし、勉強の場になれば」と桃花さん。若手も自らSNS(ネット交流サービス)で宣伝に力を入れ、初日と千秋楽は完売だ。

 コロナ禍で寄席の集客にも大きな影響が出る最中で、真打ちに昇進した。「寄席が私を育ててくれた。その寄席に恩返しをしたい」と桃花さんは話す。

「抜てき」の2人がトリに

 上野・鈴本演芸場では、今年3月に先輩を追い抜く「抜てき」で真打ちに昇進した林家つる子さん、三遊亭わん丈さんが、7月1~10日の上席でそれぞれトリを取る。昇進披露からわずか3カ月余りで2度目のトリは、落語協会ではこれまでにない速さだという。

 桃花さん同様、2人も次世代の落語界のけん引役だ。古典も自作の新作も手掛け、同世代の客をうならせる。披露興行は連日満席。その盛況ぶりに、席亭の鈴木敦さんは「十分トリをお願いしていいと判断して、披露興行の最中に2人に依頼した」という。

 「真打ち昇進が決まった時もうれしかったが、今回はその100倍ぐらいうれしい」。昼のトリを取るわん丈さんは「新作を作ることで培った落語のわかりやすさを、古典は難しそうと思う人に伝えられるか。古典の品の良さをどれだけ現代チックな新作に入れられるか、どう見せるかに気をつけたい」と話す。

 一方、夜のトリを務めるつる子さんは、「びっくりしたし、うれしい。お客様はじめ皆様のおかげ。ユーチューブなどでも発信しながら初めての方にもきていただきたい」と言う。

 落語に触れたのは中央大に入学した時。「たまたま落語を見たのがきっかけで落語研究会に入りました。落語って今でもわかりやすくておもしろいんだ、という演目をかけたい。登場する女性にスポットライトを当てて、今を生きる女性にも共感できるような感情を抽出して、古典落語の世界観を崩さずに申し上げる挑戦を続けたい」と話す。

 2人の公演ポスターか、SNSのポスター画像を見せると200円の割引があるので、お忘れなく。

歌丸さん七回忌の追善公演も

 新宿三丁目の末広亭は、上席(1~10日)昼に「桂歌丸七回忌追悼公演」。歌丸さんが18年7月2日に81歳で亡くなって6年。今でも「笑点」の永世名誉司会として、林家木久扇さんが描くオープニングアニメに登場している。

 公演は、笑点メンバーの春風亭昇太さん、三遊亭小遊三さん、三遊亭好楽さんや、桂米助(ヨネスケ)さんらが日替わりで登場。落語とともにテレビでは見られない歌丸さんの思い出話を語る。トリは直弟子の歌春さん、歌助さん、歌若さん、歌蔵さん、枝太郎さんの5人が交代で務め、師匠の得意ネタを演じる。

 今、寄席で最も集客力があるのは、講談人気を引っ張る神田伯山さん。7月は出演機会が多い。師匠の人間国宝、神田松鯉(しょうり)さんがトリを務める新宿・末広亭の1~10日夜と、浅草演芸ホールの16~20日の夜に出演予定。末広亭では21~30日の夜のうち5日間トリを務めるが、こちらは前売り券が残りわずかだ。

 最新情報は落語協会、落語芸術協会や寄席、出演者のSNSなどでご確認を。【油井雅和】

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