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乗って守ろうJR水郡線、12月に全線開通90年 催しでお祭りムード

毎日新聞 2024年7月1日 15時30分

 茨城県と福島県を結ぶJR水郡線(147キロ)が12月、全線開通90年を迎える。JR東日本と茨城県をはじめとした沿線自治体は7月から、利用促進にむけたイベントを開始。年末までお祭りムードが続きそうだ。一部区間の収支が赤字と公表された水郡線を、乗ってもらって守っていこうという動きが本格化している。

 「販売開始早々、座席は売り切れたと聞いています」。JR東日本水戸支社の担当者は声を弾ませる。

 同社は6、7日、臨時列車「懐かしの水郡110系号」を、水戸―常陸大子間で一日各1往復走らせる。水郡線で17年前まで使われ通勤・通学客に愛されていた車両と同じキハ110系と呼ばれる車両を、レトロ調にラッピングした。

 通常の指定席のほか、一部座席を水郡線の車両基地や運転シミュレーター体験、滝巡り、バーベキューや温泉なども同時に楽しめるツアー商品として売り出したところ、両日の2両編成108席が往復ともにすべて売れた。同社では今回の臨時列車を「第1弾」と位置づけており、12月に向けて、さまざまなイベントや列車を用意しているという。

 一方の県も、全線開通90年をきっかけとした水郡線への支援に注力する。沿線の新たな魅力発信や利用促進につながる取り組みへの支援に今年度、約1700万円を新規計上し、5月まで公募していた。乗客増につながる沿線イベントや駅でのおもてなし企画、新たな旅行スタイルの提案などを想定しており、7月中にも対象となる事業を決め、年末までに実施する見通しだ。

 JR東日本は2022年、利用者の少ないローカル線を対象に、輸送密度(1日1キロ当たりの平均旅客輸送人員)が2000人未満の区間と収支を初めて公表。水郡線は19年度、福島県の磐城塙から茨城県の常陸大子までの25・7キロで500人未満、同県の常陸大宮―常陸大子(32・2キロ)など2区間で1000人未満だった。

 19年10月の台風19号で鉄橋が流されて一部区間が不通になる災害にも見舞われた。21年3月に全線で運転を再開して以降も、輸送密度や収支の傾向はあまり変わっていない。

 県や自治体はこれまでも、定期券利用者に協賛店での飲食やホテル宿泊代を割引するなどの取り組みを通じ、利用促進を図ってきた。県の交通政策課は「廃線になるというような話をJRから聞いているわけではないが、乗客が落ち込んだり、改善策がないままだったりすると、そういった議論にもなりかねない」と話しており、90年の節目を活性化の起爆剤にしたい考えだ。【寺田剛】

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