12日午前3時50分ごろ、「松山市緑町1の住宅街で土砂が流れ込んで家がつぶれている」と110番があった。
松山市消防局によると、3人が住む木造2階建て住宅に土砂が流れ込んで家屋が倒壊した。3人とも連絡が取れておらず、逃げ遅れた可能性がある。
ほかにも、マンションや民家など計4棟が被災したが、住民は避難したとみられている。
土砂は幅50メートル、高さ100メートルにわたって崩れており、消防などが撤去作業をしている。
現場は、松山城が建つ城山(標高131メートル)の北東側のふもとの斜面で起きた。周辺は住宅街で、民家やマンションが建ち並んでいる。
市や松山城総合事務所によると、松山城の天守東側には救急車など緊急車両用の道路があり、2023年夏ごろから路面にひび割れなどが見られた。このため、今月から復旧工事が始まり、雨天の際はブルーシートが掛けられていた。
市の担当者は「斜面の工事をしていたわけではないので、現段階では工事が原因とは考えていない」と説明。市は今後、土砂崩れとの関連を調べるという。
近くのマンションに住む80代の男性は「『ゴー』という音が数秒続いたあと、ドーンと地響きがした。地震か竜巻かと思い、恐ろしかった。懐中電灯で照らして外を見たら家が崩れていた」と話した。70代の妻は、女性の悲鳴のような声が聞こえたという。
緑町で畳店を営む栗田悦男さん(73)は「ひっきりなしに来る消防車の音で目が覚めた。窓を開けてみたら、近所の家が跡形もなく土砂に埋まっている様子だった。今まで何回も大雨はあったが、このようなことは経験したことがない。とても怖い」と振り返った。
近くに住む会社員の70代の女性は「寝ていた時に『ガシャガシャ』と聞いたことのないような大きな音が聞こえた。まさか土砂崩れだとは思わなかった」と語った。
自宅周辺は流れ込んだ土砂が道を覆って、車が出せない状態だという。女性は「避難している人もいるが、家を空けたくないので待機している」と話した。
松山市は午前5時、災害対策本部を設置し、緑町を含む清水地区の1万3226世帯に警戒レベルが最高の「緊急安全確保」を出した。
松山地方気象台によると、愛媛県内では梅雨前線の影響で10日午前10時ごろに雨が降り始めた。11日の松山市の雨量は7月平年の総雨量の半分を上回る134ミリに達した。11日深夜から雨が強まっていた。【中田敦子、井上元宏、山中宏之、鶴見泰寿】