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不祥事続発に「組織管理の難しさ痛感」 酒井良海上幕僚長が辞任会見

毎日新聞 2024年7月12日 21時10分

 海上自衛隊を中心に不祥事による218人(延べ220人)の処分を防衛省が発表した12日。事実上の更迭となった海自トップ、酒井良海上幕僚長が臨時の記者会見に臨んだ。「組織の文化や隊員のマインドを変える難しさを痛感している」としつつ「不正を見て見ぬふり、なあなあという体制が一部残っていたのではないか」と組織の現状に言及した。

 海自は今回、国の安全保障に関わる「特定秘密」の不適切な取り扱いなどを巡り、免職を含む113人の懲戒処分者を出した。酒井氏も指揮監督が不十分だったとして減給の懲戒処分を受け、この日の閣議で退職(19日付)が承認された。

 酒井氏は会見の冒頭「国民の信頼を大きく損ねた」と述べ、深々と頭を下げた。自身の退職については「人事のプロセスへの発言は適当ではない」とし「隊員の教育や部隊の組織管理を指揮監督する責務を負っているにもかかわらず、それを果たし得なかった責任を問われるのは当然だ」とも話した。

 酒井氏は2022年3月、海幕長に就任した。それ以降、海自では不祥事が相次いだ。就任約9カ月後に1等海佐が海自OBに特定秘密を漏らしたとして懲戒免職処分となったほか、部隊でセクハラ被害を訴えた女性隊員が加害者の男性隊員との面会を強要され、その後退職した事案も起きた。今年4月には伊豆諸島・鳥島沖で訓練中の哨戒ヘリコプター2機が墜落し、搭乗員8人が死亡した。そして今回、不祥事が相次いで発覚し引責辞任へと至った。

 会見では2年4カ月の在任期間を振り返り「さまざまな不祥事が起きる度に根本原因を考え、対応策を講じてきたが、まだまだ不十分。組織管理の難しさを実感している」と悔しさをにじませた。一方で「着任以来、海自を支えるのは司令官から末端の隊員に至るまでの真摯(しんし)で愚直な任務への取り組みだと何度も実感させられた」と振り返った。

 海自を巡っては今回処分された不祥事にとどまらず、潜水艦修理に絡み川崎重工業が裏金を捻出し、隊員が金品を提供されていた疑惑も残る。酒井氏は「新たな体制でしっかり不祥事対策を検討し、間違ったことはしっかり修正してほしい」と呼びかけた。

 酒井氏の会見に先立ち行われた閣議後の会見で木原稔防衛相は「さまざまな、種類の違う事案が発生したことを踏まえ、海自を立て直すという必要があると判断した」と述べ、酒井氏の退職が事実上の更迭であることを認めた。

 防衛省のある幹部は「国民の信頼を失った。取り戻すのは相当厳しく、簡単なことではない。一人一人、胸に手を当てて考えていくしかない」と語った。【斎藤良太、松浦吉剛】

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