墓石を撤去する「墓じまい」が増えている。厚生労働省の衛生行政報告例によると、撤去後に遺骨を他の墓地や合葬墓、納骨堂などに移す「改葬」の件数は2022年度に過去最多の15万1076件に達した。03年度は6万8579件で、20年間で約2・2倍に増加した。専門家は、新型コロナウイルスの感染拡大がその流れに拍車を掛けたと指摘する。
過去最多を更新するのは19年度以来、3年ぶりだった。シニア生活文化研究所の小谷みどり代表理事は「コロナ禍で墓参りに行けなくなり、墓を(遠方の実家から自宅の)近くに移した人や、『もういらない』と思った人が増えたのではないか」と見ている。
少子化と核家族化の進展でライフスタイルが変化し、墓を継承する子孫が少なくなっていることが背景にある。
小谷さんは「同じ場所で墓を子々孫々、継承すること自体に無理が出ている」としたうえで、持続可能な弔いの在り方を「社会全体で考える時期に来ている」と訴える。【岡田英】