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旧優生保護法で首相謝罪 被害者「態度がころっと…納得できず」

毎日新聞 2024年7月17日 19時24分

 障害者らに強制不妊手術を行ってきた旧優生保護法(1948~96年)を違憲とし、国の賠償責任を認めた最高裁判決を受け、岸田文雄首相が17日、全国の原告被害者らと面会し、謝罪した。宮城県の原告たちは謝罪を受け入れた一方、「国はもっと早く謝罪すべきだった」と複雑な思いをにじませた。

 「被害者に寄り添い、心ある解決をしてほしい」。16歳で手術を受けた原告の飯塚淳子さん(70代、活動名)は首相との面会でこう訴えた。旧法改定後の97年から27年間、救済を求める活動をしてきた。旧法の問題を巡っては最も初期に声を上げた一人だ。

 だが、当初から国は「当時は適法だった」と繰り返すばかりだった。裁判でも原告と争いつづけた。面会後、報道陣の取材に応じた飯塚さんは国が謝罪したことについて「最高裁で負けたから謝罪へ態度がころっと変わるのは、納得できない」と憤った。

 「謝られても私の人生は戻らない」。そう苦しみを吐露する飯塚さんは「障害は決して不良ではない。二度と(強制不妊手術を)繰り返さないでほしい」と強く望んだ。

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 知的障害を理由に15歳で手術され、2018年1月に初の国賠訴訟を仙台地裁に起こした佐藤由美さん(60代、仮名)はこの日、面会に来ることはできなかった。提訴後は認知症が進み、現在は車椅子の生活を送る。意思疎通が難しいという。

 被害を代弁してきた義姉の路子さん(60代、仮名)は3日の判決後、「勝ったよ」と施設にいる由美さんに伝えた。すると、由美さんは両手を上げて喜びを示し、路子さんと握手を交わした。

 由美さんが成人式を迎えた頃の写真を持参し、首相との面会に臨んだ路子さん。「首相は何度も頭を下げられ、誠意を感じた。だが、それならばもっと早く謝ってほしかった」

 由美さんの手術を知ったのは、約50年前に義母(故人)から「(由美さんが)不妊手術を受けた」と明かされたのがきっかけだ。悔しそうな母の声が今も忘れられない。路子さん以外、他の家族は知らされていなかった。

 17年に飯塚さんの活動を報道で知った路子さんは、由美さんが受けたのは優生手術だと直感した。県の開示資料から手術が確認できたため提訴した。母の告白が約半世紀を経て、国を動かすことにつながった。

 路子さんは「完全には理解できないと思うが、妹には国から『ごめんなさいと言われた』と伝えようと思う」と話した。【遠藤大志】

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