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小林製薬、会長と社長が「率先して判断せず」 調査報告書を発表

毎日新聞 2024年7月23日 20時37分

 紅こうじサプリメントによる健康被害が相次いだ小林製薬(本社・大阪市)は23日、最初に被害を公表した日の1週間前まで、小林一雅会長(84)と小林章浩社長(53)が「食品の安全性確保のために率先して対策を実行に移す判断や指示を行わなかった」などとする調査報告書を発表した。外部の弁護士で構成する「事実検証委員会」がまとめた。

 一連の経営責任を明確にするため、いずれも創業家出身の一雅氏と章浩氏の辞任を23日の臨時取締役会で決定。これまで創業家出身者が就いていた社長には、創業家出身者ではない山根聡専務(64)が8月8日付で就く。責任の一環として、章浩氏がこれまでもらった月額報酬の50%を、山根氏が40%をそれぞれ6カ月分自主返上する。章浩氏は取締役を続けて補償担当となり、一雅氏は一線を退き特別顧問に就く。

 同社の紅こうじサプリメントを摂取後、腎疾患やその他の症状が出て医療機関を受診した人は2200人以上に達した。摂取と症状の因果関係の調査が進む死亡疑い例は現時点で約70人に上る。

 1月中旬に同社が最初の健康被害を把握した後、原因物質の特定を優先させ、3月22日まで約2カ月にわたって被害を公表しなかった。遺族から届け出があった死亡事例を同社の判断で厚生労働省に報告していなかったことも6月に判明した。

 調査報告書は初動対応について「遅くとも2月上旬以降、全社を挙げて早急に対処すべき緊急事態」だったとして、消費者の安全を最優先に考え、被害の公表や製品回収を急ぐべきだったと指摘した。

 報告を受けた取締役会は23日に公表した文書で、章浩氏について「リーダーシップを発揮することができず、結果として行政報告や公表の遅れを招いた経営責任は重大」と総括した。

 同社は23日に記者会見を開かず、「内容を正確に伝えるため」と説明した上で電子メールで報道機関の問い合わせに応じた。

 厚労省が原料のサンプルから検出した「プベルル酸」は青カビ由来の天然化合物で、腎障害を引き起こすことが確認されている。

 調査報告書では、青カビが紅こうじの培養タンクに付着していたとする従業員の証言なども盛り込まれた。また、人手不足などで品質管理が現場任せでおろそかだった実態もあらわになった。【妹尾直道】

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