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千葉の老舗「松屋陶器」、106年の歴史に幕 ネット販売は継続

毎日新聞 2024年7月25日 10時0分

 千葉市中心部で看板を掲げてきた「松屋陶器」(中央区市場町6)が28日で106年の歴史に幕を下ろす。家族4代にわたって経営を続けてきたが、建物が老朽化し維持管理が難しくなったことなどから閉店を決意したという。社長の松木一也さん(50)は「これまで店を守ってきてくれた先祖やお客さんなど、すべてに感謝しかない」と話している。

 店は1918(大正7)年に曽祖父の次郎作さん(79年に85歳で死去)が創業し、松木さんが15年前に会社員を辞めて4代目を継いだ。全国から取り寄せた陶磁器やガラス食器、漆器、キッチン用品などを販売している。

 店内は外観から想像できないほど奥行きがあり、商品を保管している倉庫は地下1階から地上4階にまで及ぶ。開催中の閉店セールでは、全商品を半額にしているほか、倉庫内に入って、気に入った商品があれば買うこともできる。妻の美和さん(50)は「倉庫には、入るたびに新しい発見がある」と話す。

 長年、市民らに親しまれてきたが、経営的には課題も多かった。昭和30年代に改装した建物は老朽化が進み、売り上げも減少していく中、電気代など維持費の負担が重くのしかかっていた。

 「現状を変えたい」。松木さんは店を継いでから、飲食店やホテルなどへの納品を続ける一方、店をどうしていくべきか悩み続けていた。

 「苦しい日々だった」と松木さんは振り返る。とりわけコロナ禍では、飲食店の閉店や宴会の減少に伴い、食器の需要も低下した。少しでもお客さんに来てもらおうと、休業日や閉店後に家族で店内の壁を白く塗ったり、ディスプレーを工夫したりするなどした。インスタグラムの開設やネット販売も始め、試行錯誤を続けてきた。

 そんな悪戦苦闘する中でも、インスタグラムをきっかけに2021年には東京・新宿の百貨店で期間限定ショップを開く機会を得たことも。美和さんは「応援の言葉や、『やっと来られました』と言ってくれる方も多く、ここまでやってきて本当に良かった」と話す。

 5月に閉店を発表してからは、方々から惜しむ声が寄せられた。「親子3代にわたり商品を買ってきました」と店を訪れる人や、60年前に購入したという中華皿を懐かしそうに持ってきてくれる人もいた。松木さん夫婦は「こんなに愛されていたんだな」と日々、実感しているという。

 店は閉じるが、ネット販売や飲食店などへの納品は今後も続ける。店の裏にある自宅1階の駐車場を改装し、カフェを開く計画も練っている。厳選した陶器や雑貨を陳列しながら、ランチやスイーツを提供する店を考えているという。来年3月のオープンを目指しており、「松屋陶器」の歴史を今後も紡いでいくという意味を込め、店名は「陶器屋カフェ つむぎ」とする予定だ。

 松木さんは「引き続き人と人とのつながりを大切にしながら、第二の人生を楽しみたい」と話す。26日は休業。営業は正午~午後5時。【近森歌音】

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