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暑さ指数何のため? 高校野球半数が「運動は原則中止」で実施 埼玉

毎日新聞 2024年7月25日 17時46分

 2018年に国内最高気温41・1度を観測した埼玉県。昨夏開催の高校野球埼玉大会では、環境省が「暑さ指数」を公表している自治体で行われた110試合のうち約半数が、「運動は原則中止」とされる暑さ指数31以上を記録する中で実施されたことが判明した。甲子園では開始時間を午前と夕方に分ける「2部制」が今年から部分導入されるが、地方大会の対応は各都道府県の高校野球連盟などに委ねられており、関係者は頭を悩ませている。

 暑さ指数は環境省が気温や湿度などから算出し、熱中症の危険度を判断する指標としている。

 埼玉県内では23年7月8~28日、全国高校野球選手権の埼玉大会が9球場で開催された。毎日新聞は、このうち環境省が暑さ指数を公表している、さいたま▽越谷▽所沢▽熊谷――の4市内6球場で行われた110試合を分析。公表がない3球場34試合は除外した。

 その結果、環境省などが「原則運動中止」を呼びかける暑さ指数31以上を公式記録の試合時間内に記録したのは53試合(48%)だった。「激しい運動は中止」とする暑さ指数28以上で見ると、全体の82%となる90試合に上った。今夏も梅雨明け発表の7月18日以降は、最高気温35度以上の猛暑日の中での試合が続く。

 各地の高校野球地方大会では、試合開始時間を早めたり、2部制を試験導入したりする対策が実施されているが、埼玉ではいずれも導入されていない。全国最大規模の約140チームが参加する大会日程や、スタッフの不足が背景にある。

 県高野連の担当者は「期末テストが終わるのが7月10日前後。そこから月末までに試合を消化しなければいけない」と話す。2部制はスタッフの拘束時間が長くなり、9球場をカバーしきれなくなる。給水タイムを試合中に3回設けるといった熱中症対策を取っているものの、抜本的な対応は難しいという。

 熱中症とスポーツの問題に詳しい中京大の松本孝朗教授(環境生理学)は「暑さ指数のガイドラインは一般の中高生の部活を想定しており、事故を減らすための注意喚起であって拘束力はない」と前置きした上で、こう指摘する。「たとえ暑さ指数28であっても相応に危険性がある。人や予算に余裕がある甲子園は対策が進んでいるが、地方大会まで徹底することは難しい。各県で対策することも重要だが、死者が出る前に秋開催も視野に大会のあり方を議論する必要がある」

【田原拓郎】

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