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佐渡裕さんと「奇跡のコンサート」 福岡の中高生が「第九」協演

毎日新聞 2024年7月28日 13時30分

 指揮者の佐渡裕(ゆたか)さんと福岡県立育徳館中・高校(みやこ町豊津)管弦楽部を中心としたオーケストラがベートーベンの「第九」を協演する「奇跡のコンサート」が26日、小倉北区の北九州ソレイユホールであった。客席を埋めた約1800人の聴衆は、世界のマエストロと中高生が紡ぐ音色に聴き入り、演奏後は歓喜の拍手が鳴りやまなかった。【松本昌樹】

 同校管弦楽部は2011年、以前からあった吹奏楽部を改編してスタートした。県内の県立高でフルオーケストラがあるのは同校を含め2校のみという。入部して初めて楽器に触る生徒が多い中、6年間継続して練習に取り組める中高一貫校のメリットを生かして実力を高め、文化部のインターハイといわれる全国高総文祭には3回出場している。

 佐渡さんと管弦楽部の交流は18年、行橋市で開かれたイベントで歓迎演奏を披露したことがきっかけだった。佐渡さんは「地方の小さな町にこれだけのオーケストラがある。子どもたちのキラキラした目に感動した」と再訪を約束し、その後も交流を深めた。

 第九の協演は20年春に計画されながら、新型コロナウイルス禍で延期となった。オーストリアのウィーンを拠点に活動する佐渡さんが過密スケジュールをぬって度々、育徳館に足を運んだのは、6年前から変わらぬ生徒たちの音楽へのひたむきさと、先輩から後輩に受け継がれた第九への熱意、ティーンエージャーの無限の可能性を信じたからだった。

 コンサートには、管弦楽部員約70人に加え、北九州グランフィルハーモニー管弦楽団のメンバーと、国内外で活躍する4人の声楽家がソリストとして参加。約半年間にわたって練習を重ねた約250人の市民合唱団も舞台に立ち、クライマックスに向け一体感が増幅。壮大な大合唱のフィナーレを迎えると、会場からは歓喜の声と大きな拍手が沸き起こった。

佐渡さん「6年前の約束守ろうと」

 佐渡さんは演奏後の取材に「6年前の約束を守ろうとここまできた。課題はあったが、今日は子どもたちの力を信じて本番の指揮台に立った。僕の想像をはるかに超えた出来だった」と生徒たちをたたえた。

 生徒による実行委員長を務めた高校3年の橋本菜乃(なの)さん(18)は「佐渡先生は全力で私たちに向き合ってくれた。管弦楽部の活動の最後に、ステージからこんなに素晴らしい景色を見ることができて私たちは幸せです」と涙で目を潤ませた。

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