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片時も離れず…同行するゾウ使い「マフー」の能力 福岡にゾウ4頭

毎日新聞 2024年7月30日 19時30分

 動物園の花形として親しまれてきたゾウ。だが、警戒心の強い性格で誰にでも簡単に懐くわけではない。ミャンマーから提供を受け、30日に福岡市動物園に空路で到着したゾウ4頭の輸送では、本国から派遣されたゾウ使い「マフー」が片時も離れず、ゾウの健康状態などを確認した。耳慣れない名前の彼らは、普段どんな生活をし、どんな能力を持つ人たちなのか――。

 ゾウ使いとは、東南アジア各国などでゾウと寝食を共にしながら、ゾウを使って材木運びなどの仕事に就く人のこと。英語で「mahout(マハウト)」と呼ばれ、日本では「マフー」と発音されている。

 国内最多10頭を飼育し、ゾウのショーで有名な「市原ぞうの国」(千葉県市原市)などによると、マフーとゾウの歴史は古い。東南アジアなどでは、約3000年前から、ゾウの上に乗っての移動や田畑の整備、丸太など重いものの運搬などで相棒だった。近年は森林の伐採禁止が広がっている影響などで“仕事”は減少傾向だが、観光客を背中に乗せて山登りをしたり、パフォーマンスを披露したりすることが多いという。

 特別な資格が必要なわけではなく、多くが先祖代々受け継がれてきた家業だ。少年時代に仕事上のパートナーとなるゾウが割り当てられ、ゾウと24時間一緒の生活を送る。ゾウが死ぬと村総出で葬式を開くところもあるという。

 重要な任務であるゾウの訓練では、木製の棒の先端に先がとがった鉄製の鉤(かぎ)が付いた「手カギ」と呼ばれる道具でゾウの頭や口、耳の内側などの感覚の鋭いところを刺激し、動きを制御する。言葉で号令をかけて動いたり止まったり、鼻や脚を上げたりするよう促すこともある。

 国内では飼育員ではなくマフーが飼育を担当している動物園があり、市原ぞうの国もそうだ。現時点でタイ人の男性13人を正社員として雇用し、なかには25年以上務める人もいる。マフー歴30年超のサムランジャイ・ブンミーさん(52)は「ゾウとの関係性を実際に見てもらい、ゾウに興味を持ってもらえれば」と話す。

 ゾウを受け入れる福岡市動物園の飼育員はゾウの到着から約3カ月間、マフーからコミュニケーションの取り方といった飼育のノウハウを学ぶ。飼育方法はマフーのようにゾウの上に乗るなど直接ふれあう「直接飼育」は安全面から難しいが、飼育担当者が柵や壁越しに接して、えさをやったり健康管理をしたりする「準間接飼育」を採用する。

 ゾウの輸送から飼育まで、ゾウを迎え入れることができるのはマフーの支えがあってこそ。どこかで見かけたら、ぜひ注目を。【竹林静】

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