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「万博中のIR工事中断を」 万博協会が大阪府・市に要求 騒音など懸念

毎日新聞 2024年8月3日 13時53分

 2025年大阪・関西万博(4月13日~10月13日)の会場となる大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)で、開業を目指すカジノを含む統合型リゾート(IR)について、万博を運営する日本国際博覧会協会(万博協会)が会期中のIR工事を見合わせるよう大阪府に求めていたことが3日、明らかになった。

 複数の関係者によると、博覧会国際事務局(BIE)のディミトリ・ケルケンツェス事務局長がIR工事の騒音や景観への影響を強く懸念。同氏の意向を受けた万博協会の十倉雅和会長(経団連会長)が7月25日に東京都内で吉村洋文知事と面会し、万博会期中の工事中断を求めたが、不調に終わったという。

 IR予定地では現在、市が788億円を上限に費用を負担する形で液状化対策などの土壌工事が進む。今夏にもIR本体の準備工事に着手し、本体工事は万博が開幕する25年春ごろ着工。30年秋ごろの開業を予定している。

 IRは民設民営で、協会や府市に工事の中断を強制する権限はないという。ただ、BIEの意向は岸田文雄首相の耳にも届いているといい、霞が関には「無視して続ければ国際問題に発展しかねない」との見方もある。一方、中断すれば事業者側の損失となり、間に入った形の府市は難しいかじ取りを迫られそうだ。

 政府は23年4月、国内で初めて府市のIR整備計画を認定。万博会場に隣接する約49万平方メートルにカジノや三つのホテル、国際会議場などを整備する計画で、米MGMリゾーツ・インターナショナルの日本法人やオリックスなどが出資する大阪IR株式会社が同年9月、府と実施協定を締結した。

 協定では万博期間中の工事を前提に、騒音や振動防止のために適切な対策を講じることや、万博会場への影響が大きい工事については工程や施工方法を府市などと調整するとしていた。また、事業者が事業の前提条件が整っていないと判断した場合は、26年9月まで違約金なしで撤退できる「解除権」も設定された。

 大阪IRの関係者は、取材に「万博とIR工事が重なることは初めから分かっていたことだ」として、今後も工事の継続を前提に府市と話を進めるつもりだと語った。IR誘致を推進した吉村知事も従前、「さまざまな条件を想定したシミュレーションでも十分対応できる」と述べるなど、万博とIR工事の並行は織り込み済みだった。

 近く今後の対応を巡って府市と事業者が具体的な協議を始めるといい、夢洲からの撤退という「最悪のケース」を避けつつ、BIEや万博協会との着地点をどう見いだすのか、注目される。【東久保逸夫、鈴木拓也、藤河匠】

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