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広島の平和記念式典、入場規制エリア拡大に賛否 昨年の暴行事件で

毎日新聞 2024年8月4日 17時10分

 平和記念公園(広島市中区)で6日に開催される平和記念式典で、今年から入場規制エリアが公園全域に拡大される。昨年の式典で、過激派「中核派」の活動家5人が市職員に暴行したとして逮捕されたためだ。市の規制強化に対して、市民団体や被爆者団体の意見は割れており、改めて祈りの場のあり方が問われている。

 中核派の活動家5人は2023年8月6日早朝、市民団体「8・6ヒロシマ大行動実行委員会」(大行動)が公園内で開催した集会に参加。スクラムを組んで進み、市職員に体当たりしたとして、暴力行為等処罰法違反(集団的暴行)容疑で逮捕、起訴された。

 それを受けて広島市は今年5月、安全対策の強化を発表。式典当日の6日午前5~9時は、公園全域を入場規制エリアとし、6カ所の入場口で手荷物検査をする。拡声器や横断幕などの持ち込みも禁止で、従わない場合は入場を断る方針だ。

 市の新たな警備方針を巡って、市民団体などの間で賛否が巻き起こっている。

 「反戦・反核運動に対する弾圧だ」。大行動の宮原亮事務局長(48)は猛反発する。今回の式典に向けて、5日夜から公園内の原爆ドーム前で座り込み、規制が始まる6日午前5時に退去を要請されても従わない方針を示している。

 一方、市民団体「静かな8月6日を願う広島市民の会」(市民の会)の石川勝也代表(68)は「8月6日は広島市民にとって大切な鎮魂の日。式典は政治的なイデオロギーを表現する場ではない」とし、市の規制強化を歓迎している。

 そもそも式典当日の原爆ドーム周辺は近年、市民団体同士の対立で混乱した状態が続いている。

 大行動は12年から、原爆ドーム周辺で集会を開催。拡声器などを使ったデモ活動に対し、主張の異なる市民の会などが反発して小競り合いになることもあった。23年の式典も、「岸田は帰れ!」などののぼりを掲げた大行動の集会を多数の警察官が取り囲み、その周辺で市民の会メンバーが「不道徳」などと書かれたプラカードを掲げるなど、異様な雰囲気の中での開催だった。

 式典当日の平和公園では、ほかの市民団体や宗教団体も慰霊行事などを開いてきた。市の規制強化により、こういった団体も影響を受けることになる。

 1981年から原爆ドーム周辺で、反戦集会や原爆犠牲者を追悼するイベントを開いてきた市民団体「8・6ヒロシマ平和へのつどい実行委員会」は、市の規制強化を「表現の自由の圧殺」と反発。インターネットで約1万4000人分の反対署名を集め、1日に広島市に提出した。

 記者会見した久野成章事務局長(64)は「規制強化の引き金を引いた」と大行動を非難する一方、「原爆ドーム前での表現の自由を奪わないでほしい。40年以上前からやっている我々が真の被害者だ」と訴えた。

 さらに、被爆者団体でも意見が割れている。

 広島県原爆被害者団体協議会(県被団協)の箕牧智之(みまきとしゆき)理事長(82)は「8月6日は追悼の日であるべきで、騒動が起きるのは絶対に良くない。規制強化は仕方がない」と市の措置に理解を示す。

 一方、もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(79)は「さまざまな立場の人が反戦や反核を訴えるのは自由であるべきだ。手荷物検査も、広島市が市民を信用していないように映る」と反対している。【中村清雅】

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