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東電、原電に「電力料金の前払い」1400億円 運転停止中でも

毎日新聞 2024年8月7日 19時0分

 東京電力が原発専業の日本原子力発電に対して、毎年支払う基本料金(年550億円)とは別に、原電の安全対策の工事費用として、2021年度からの3年間で約1400億円を支払っていた。支払いの名目は「将来の電力料金の前払い金」だが、原電は敦賀原発2号機(福井県)の再稼働が不許可の見通しとなるなど、原発再稼働の道筋は描けていない。東電の株主などからは妥当性を問う声も出そうだ。

 これまで原電は、他社が支払った前払い金(原電から見ると前受け金)の総額を決算書などに記載していたが、支払い元や使い道などは公表していなかった。

 原電は東電など大手電力会社が出資する原発専門の電力会社で、原発で発電した電力を大手電力に販売してきた。ただ、東電の原発事故後は運転を停止したままだ。

 東電など大手電力は原電の発電がゼロでも、人件費や原発の維持管理費用などを毎年、基本料金として支払う。東電が23年の電力料金の値上げ申請時に政府へ提出した資料によると、23~25年の基本料金は年平均550億円だった。

 基本料金とは別に支払った約1400億円は、原電が再稼働を目指す東海第2原発(茨城県)の安全対策費だ。東電は原電の要請に応じ、安全対策費を貸付金などではなく、「将来、原電に支払う電力料金を前倒しで支払う」ことを21年度に決めた。原電は21年7月の政府提出資料などで、東電との契約を明らかにしている。

 原電が今年6月に公表した会社概況書によると、他社から支払いを受けた前受け金は21年度486億円、22年度541億円、23年度385億円で、24年3月末の残高は1413億円。原電は毎日新聞の取材に対し、その大半が東電からの支払いだと明らかにした。

 基本料金は東電の電力料金に含まれ、契約者が負担している。東電から原電への前払い金は会計上、東電の電力料金に含まれていないが、将来は契約者の負担になる可能性がある。

 東電は「電気事業会計規則にのっとって適切に会計処理しており、問題はない」としている。原電の原発が再稼働せず、安全対策費用が膨らめば前払いも長期化するが、支払期間などについて東電は「原電との契約に関わることなので具体的な金額などは差し控える」としている。

 原電が保有する原発4基のうち、2基が廃炉作業中。再稼働を目指す東海第2原発と敦賀原発2号機は11年以降、停止したまま、再稼働のメドは立っていない。東海第2原発は1978年の運転開始から45年超の老朽原発で、原電は津波対策の防潮堤など総額2350億円の安全対策工事を進めている。ところが防潮堤の工事に不備が見つかり、23年6月から工事の一部を中断。24年9月としていた工事完了は延期となる可能性が高く、再稼働の道筋は見えない。【川口雅浩】

日本原子力発電

 1957年に電力大手9社と電源開発の共同出資で設立された原発専業の電力卸売会社。東海原発(茨城県)と敦賀原発1号機(福井県)は廃炉作業中で、残る東海第2と敦賀2号機は東京電力福島第1原発事故後に停止し、発電量はゼロになった。発電の有無にかかわらず、東北、東京、中部、関西、北陸の電力5社から「基本料金」を受け取り、人件費や原発の維持管理費などに充てている。

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