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8.6の広島を投稿する写真家 市民の思いをリアルタイム発信

毎日新聞 2024年8月9日 15時30分

 広島を撮影したシリーズで三つの受賞歴がある広島県呉市出身の写真家、藤岡亜弥さん(52)=東広島市=は2021年から毎年8月6日の広島市内の様子の写真をX(旧ツイッター)に投稿している。「私の個人的な広島の記録です」と話す藤岡さんと6日、市民に「原爆の日」への思いを聞きながら町を歩いた。

 藤岡さんの投稿は午前5時32分の写真から始まった。「Hiroshima Today」の文字とともに、入場規制が強化された平和記念公園(広島市中区)に入る人の様子のほか、朝日が昇る様子や川辺を散歩する人など日常の風景も投稿していく。公園近くで、飛べずに育てているというカラスと一緒にいた中区の米屋万寿美さん(59)は「20カ国以上の人に見てもらった。今日も世界平和を訴えたい」と話した。

 原爆が投下された午前8時15分の原爆ドーム前。藤岡さんは、犠牲者になりきって地面に横たわり、核兵器への抗議の意思を示す「ダイ・イン」の様子を撮影した。長野県から参加した小学6年の山本真由佳さん(11)は「多くの人たちが亡くなったことを学び、祈りを込めた」と話した。

 午前8時半ごろには祇園北高(広島市安佐南区)の生徒たちが英語で「私たちは何について話せば世界をより良くすることができるのか」と書いたうちわを手に集まっていた。公園を訪れた外国人に答えを書いてもらい、そのうちわを別の人に渡す取り組みを今年始めた。2年の高畑萌那さん(16)は「8月6日は市民にとって忘れてはいけない日。うちわを手にして被爆地・広島を思ってほしい」と願いを込めた。

 午後は平和公園から離れ、世界平和記念聖堂(中区)を経てギャラリーG(同)へ。展覧会で焼け焦げた三輪車を再現した作品を紹介するアーティストの藤元明さん(48)は「核の脅威と闘い、一日一日、平和を勝ち取っているという欧州の知人の考えに共感して作品を制作した」と話した。

 夜の平和公園では駐日パレスチナ大使が市民有志の集会にオンラインで参加した。藤岡さんは午後9時、元安川で犠牲者を追悼する灯籠(とうろう)流しを見に来たバングラデシュの髪の長い女性を撮影して投稿を終えた。この日、3万歩近く歩いた藤岡さんは「歩いて見たものをリアルタイムで発信することで見た人が今の広島のリアリティーを思う一つのきっかけになれば」と振り返った。【関東晋慈】

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