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宮崎震度6弱一夜明け 意識不明の1人含め14人けが 住宅損壊も

毎日新聞 2024年8月9日 11時50分

 宮崎県で最大震度6弱を観測した地震から一夜明けた9日、被災地では自治体や住民らが被害状況の把握や今後の備えに追われた。「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が初めて出されたことを受け、沿岸住民からは「いざ津波が来たとき避難できるのか」と不安の声が聞かれた。

 最大震度6弱を観測した宮崎県日南市では、職員約100人が前夜から避難所などで泊まり勤務をし、早朝から約140人が市内の被害調査にあたった。9日夜も避難所での対応を控えるなか、市福祉課の谷口喜彦課長は「台風なら2日でめどがたつが、今回はやるしかない」と疲労をにじませる。

 宮崎、鹿児島、熊本の3県では9日までに14人のけが人を確認。うち2人が重傷で、宮崎県日向市では50代男性が屋外階段を使って屋上に避難しようとしたところ倒れ、意識不明で搬送された。熊本県玉名市では70代女性が避難しようとして転倒し、太ももの骨を折った。住宅は宮崎、鹿児島両県で58棟が被害を受け、日南市では40棟に上った。

 地震は行楽シーズンを直撃し、南海トラフ地震で最大14メートルの津波が想定されている日南市は、市内5カ所の海水浴場やキャンプ場を臨時情報を踏まえて閉鎖を決定。大分市も、別府湾に面する海水浴場「田ノ浦ビーチ」を遊泳禁止とした。いずれも、14日まで看板を設置して周知する。

 宮崎県の9日の災害対策本部会議では、県内の宿泊施設などでキャンセルが相次いでいることが報告された。県観光推進課の担当者は「今後、観光業への支援が必要になる」と話す。

 鹿児島県は臨時情報を受けて災害警戒本部を当面維持することとし、24時間体制で警戒にあたる方針だ。塩田康一知事は9日に出したメッセージで3日程度の水や食料の備蓄、避難場所や経路の確認などを呼びかけ、「巨大な地震に注意しつつ、落ち着いて行動するように」と訴えた。

 大分県別府市は臨時会議を開き、観光業者ら35人と意見交換。多くの留学生が在籍する市内の立命館アジア太平洋大関係者から情報提供のあり方について問われ、市の担当者は「ホームページなどで英語、中国語、韓国語で情報を発信している。そのことを案内してほしい」と回答した。

 8日夕の地震直後には、津波注意報発出に伴い多くの沿岸住民が避難を迫られた。日向灘に面した日南市の鵜戸(うど)区自治会長、杉原実さん(60)は地震の直後、地区内に11人いる1人暮らしの住民に声を掛けて回った。住民の中には「自分はいつ死んでもいい」と避難しようとしない人もいたといい、杉原さんは「次の地震は夜中かもしれない。地区内の全員を助けられるのか心配だ」と不安を募らせる。一夜明けた9日も杉原さんは地区住民の安否確認に回った。

 医療機関も備えに追われた。日南市の愛泉会日南病院(184床)は8日の地震直後、1階の入院患者42人を2階に垂直避難させた。臨時情報が出たのを受け、さらに今後1週間は2階での避難を続ける。

 「再び地震や津波が来たら孤立する可能性もある」と西島元利理事長(44)。同院は重症心身障害児者の基幹医療機関でもあり、「災害が起きても医療を続けるためには移転も検討しなければならない」と話す。

 一方、管内に玄海原発(佐賀県玄海町)と川内原発(鹿児島県薩摩川内市)がある九州電力(福岡市)は臨時情報を受けて8日、本店に南海トラフ地震対策総本部を設置。9日には関係支店をつないだテレビ会議を開き、南海トラフ地震発生時の対応手順の確認や復旧資材の確認を進めた。【塩月由香、田崎春菜、神山恵、石井尚、久野洋、平川昌範】

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