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命が消えた瞬間「ツ-」 特攻隊員モールス信号 “最期の叫び”伝え

毎日新聞 2024年8月15日 8時45分

 セタセタセタツー……(我、戦艦に突入す)。「ツー」は戦艦に突っ込む直前の音。海軍航空隊串良基地(現・鹿児島県鹿屋市)から飛び立った特攻隊員の“最期の叫び”だ。

 このモールス信号を受信していたのが基地近くの地下壕(ごう)の第一電信室。深さ約7メートル、全長約51メートルの地下壕に奥行き15メートル、幅4メートルの空間が設けられ、24時間3交代制で勤務した関連部隊の通信士が、特攻隊員の生きた証しを記録した。

 信号には「クタクタクタツー」(駆逐艦に突入)、「ホタホタホタツー」(空母に突入)のパターンもあった。だが、実際に突入できたのはわずか。多くは敵機に撃墜され、すぐに「ツー」が途切れたという。

 近隣の鹿屋基地にも同様の電信室があったが、現在立ち入りはできない。串良の電信室は見学向けに整備され、階段で下っていくとひんやりした空気を感じる。

 現地でQRコードにアクセスすると、特攻員たちの最期の瞬間がリアルに伝わる。当時、通信士だった市田謙三元兵曹は回想録に「死に水をとるつもりで通信を聞いた」と記したという。見学者を案内する市平和ガイドの迫睦子さん(77)は「騒いでいた(見学の)子も、命が消えた瞬間の『ツー』を聞くと黙り込む。特攻隊員たちにも夢や希望があったと想像してほしい」。

 串良基地跡に設けられたのが串良平和公園。特攻隊員363人と一般攻撃隊員210人をまつる慰霊塔が建立されている。脇の滑走路跡には道路が整備されている。車で南東に7分ほどの大塚山公園は戦争末期、米軍上陸に備えた部隊が観測をしていた場所だ。【梅山崇】

海軍航空隊串良基地跡の地下壕第一電信室 

 鹿児島県鹿屋市串良町有里4963の2。市の指定文化財になっている。見学は午前9時~午後4時(年末年始除く)。

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