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「潮」会えるの8月まで 「サマータイムレンダ」聖地・和歌山、熱く

毎日新聞 2024年8月16日 13時40分

 「和歌山市内にて小舟潮(こふねうしお)に会えるのは8月末まで」。この和歌山市観光課のX(ツイッター)の投稿が話題となった。小舟潮とは同市が舞台の漫画・アニメ「サマータイムレンダ」のヒロインで、2022年3月には市のアニメ観光大使に任命されていた。投稿は市内など各所で等身大パネルの設置が終了するという知らせで、惜しむ声が相次いだ。同年4月のアニメ放映開始から2年以上がたった今も、物語のモデルとなったり、シーンに登場したりする「聖地」には多くのファンが訪れている。

 和歌山市出身の田中靖規さん(41)が作者のSFサスペンスで、主人公の網代慎平が亡くなった潮を救おうとタイムリープする物語。舞台となる「日都ケ島」は無人島群・友ケ島がモデルで、その他にも加太など市内の風景が多く使われている。慎平の好物として地元名物の抹茶アイス「グリーンソフト」が登場するなど、リアルな世界観が「聖地巡礼」を後押ししている。

 同課によると、23年の友ケ島の来島者数は約4万9000人で、3年連続で増加中だ。島に渡る唯一の交通手段、友ケ島汽船は一日4~6便が出ており、土日は乗り場に早朝から行列ができる。

 「サマータイムレンダが好きで、中国から来ました」。遼寧省丹東市の大学生、鄭国鈺さん(22)と張峻銘さん(22)は朝一番で友ケ島に渡り、作品にも登場する砲台跡など見学した後、加太の散策を楽しんだ。「アニメの世界がそのままでびっくり。少し遠かったけれど大満足です」と鄭さん。中国では「鬼滅の刃」などと並ぶ人気ぶりと教えてくれた。

 物語の鍵となるスーパー「コバマート」は、加太の和菓子店「小嶋一商店」がモデル。アニメの放映開始後、外観などの写真を撮りに訪れる観光客が絶えない。販売している「よもぎ餅」も作品に登場するため、午前8時半の開店前から待つファンも。土日に平日の2~3倍となる量を仕込んでも、午前中で完売するほどの盛況ぶりだ。

 店主の小嶋修一さん(63)は「餅を売り始めて36年。まさかこんな形で注目を浴びるとは、想像もしていなかった」と打ち明ける。作品にも登場する店横の階段に上る人が多くなり、チェーンをつけるといった安全対策も講じた。「観光客の多さでうれしい悩みもあるが、加太全体が盛り上がっているのは良いですね」

 特に加太港から出ている友ケ島汽船が欠航した日には、目当ての観光客が周辺の地区に滞留。サマータイムレンダと関係のない店や施設も、多くの人でにぎわう効果があった。

 市内など10カ所に設置されていた潮の等身大パネルは、今年3月までだった和歌山アニメ観光大使の任期満了に伴って撤去されることが決まった。Xで告知されると「それまでに必ず行きたい」「さみしい」との声が寄せられた他、「サマータイムレンダがきっかけで和歌山旅行に行った。潮ありがとう」などと感謝を伝えるアカウントも多くあった。

 同課の担当者はこう話している。「和歌山市内はもちろんさまざまな場所で潮に会い、応援してくれてありがとうございました。これからもサマータイムレンダゆかりの地として、皆さまのお越しをお待ちしています」。【安西李姫】

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