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酷暑の夏 路上生活者、つかの間の涼求め 炊き出しにも制約

毎日新聞 2024年8月25日 10時15分

 記録的な暑さとなった今年の夏。日中は猛暑日が連続し、夜間の最低気温が25度を超える「熱帯夜」も続いた。誰にとっても危険な暑さだが、帰る家のない路上生活者にはどれほど苦しいものか。当事者や支援団体を訪ねた。

 午後6時になっても容赦のない日差しが路上生活者らの列に影をつける。8月中旬、大阪市内の公園であった弁当の配布に約20人が集まった。この日の最高気温は38度。列に並んだ高齢の男性は縁石にしゃがみ込み、額ににじんだ汗を拭っていた。

 弁当を配った「扇町公園炊き出しの会」は普段は毎週手作りのおにぎりやいなりずしを炊き出ししている。しかし、酷暑と代表の病気が重なったことに加え、おにぎり作りに当たるメンバーの高齢化も考慮して8月の炊き出しを断念した。ただ、「食べ物に困る路上生活者を見過ごせない」と会の森江浩一さん(69)ら有志が市販の弁当を用意。人数制限を設けて配布した。

 弁当と冷たい飲み物を受け取った西さん(73歳、仮名)は「夜の暑さが年々ひどくなっている。野宿生活で熱中症にならずに夏を乗り切れるか不安だ。こうして食べ物を配り続けてくれるのはありがたい」と話した。

 森江さんは「同じ大阪でも西成に比べてこの辺りは支援団体や炊き出しが少ない。9月からは炊き出しを再開したい」と語り、並ぶ人々をねぎらっていた。

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 路上生活者の多くは日中は冷房を求めて公営施設や商業施設を回り、施設が閉まる夜は公園や高架下で寝泊まりしている。ただ、日中も「臭いで人に嫌がられたくない」「顔を覚えられると嫌な顔をされる」と炎天下に外をさまよう人もいるという。

 路上生活者にとって日中の駆け込み寺の一つが、生活困窮者の生活支援をしている認定NPO法人「Homedoor」(大阪市北区)が設けた空調の効いた「団らんスペース」だ。日中、涼みに来る路上生活者らに飲み物などを提供している。シェルター(一時的な宿泊施設)もあり、路上生活者の生活保護申請や就労支援にもつなげている。

 Homedoorが続けている、夜間に路上生活者の様子を尋ね歩く夜回り活動「ホムパト」では7月、暑さで自転車に突っ伏している路上生活者を発見した。熱中症のような症状で、急いでスポーツドリンクを渡して救急車を呼んだ。8月には熱中症で倒れた路上生活者についての相談も寄せられた。

 夜回りでは弁当や飲み物を渡しながら安否確認をしたり、支援に関するヒアリングをしたりしている。8月は暑さ対策に塩分タブレットや熱中症予防のアメも配った。大阪市内で当事者の多い四つのコースを約2時間かけて徒歩や自転車で回り、途中で出会う路上生活者らと談笑しながら様子を尋ねていく。

 理事長の川口加奈さん(33)は「『冬の寒さより夏の暑さの方がきつい』と言う路上生活者は多い。暑さは防ぎようがない。日中涼しく過ごせるスペースがあるので、我慢しすぎず気軽に遊びにきてほしい」と呼びかけている。

 8月中旬の夜回りコースで川口さんに声をかけられた60代の男性は「昼間はクーラーを探して街をぐるぐる回っているけど、暑さがいいかげんしんどい。シェルターの世話になろうか迷っている」と窮状を訴えていた。【滝川大貴】

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