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麴町中の「ヒップホップ禁止令」は事実誤認? 騒動招いた校長の方針転換

毎日新聞 2024年8月27日 11時0分

 定期テストや固定担任廃止で話題となった、東京都千代田区立麴町中学校が揺れている。

 学校の判断でダンス部の活動方針を転換したことが校内の反発を招き、一部で「ヒップホップ禁止令」と報じられた。しかし「事実と違う」と話す保護者もいる。

 学校改革で知られる中学校で、何が起きていたのか――。

ヒップホップダンスから創作ダンスへ

 保護者によると、麴町中のダンス部は、毎年秋の文化祭でのヒップホップダンス披露に向け、20人ほどの部員で練習してきた。

 ところが2024年3月以降、文化祭発表を取りやめ、日本中学校体育連盟(中体連)の「創作ダンス」の大会を目指す体育会系への方針転換が、学校側から部員へ伝えられた。

 麴町中のホームページ(HP)によると、指導者の確保が難しいことや「全員が主役となれる団体演技への挑戦」を理由としている。

 保護者によると、ショックを受けて泣く部員もいた。3年生が堀越勉校長に直接掛け合い、「ヒップホップを続けたい」と思いを伝えた。その後の保護者会で1学期の終業式に3年生引退の場として、ヒップホップを披露する発表会を設けることが報告された。

 保護者の受け止め方はさまざまだったが、一部は「生徒の自主的・自発的な参加」を定める区の部活動ガイドラインに反しているとして5月下旬、区教委に意見書を提出した。

一部メディアが報道、SNSで拡散

 問題が表面化したのはこの後だ。

 5月下旬に国会で「中学校でヒップホップが禁止された」と取り上げられた後、「ヒップホップ禁止令」との見出しで一部メディアに報じられ、SNS(ネット交流サービス)で批判が相次いだ。

 これに対し、麴町中や区教委は「事実と異なる」との見解を示す。「校長との話し合いで納得できた部分もある」と話す保護者もいる。

 区教委への意見書に署名した保護者によると、「校長が生徒や保護者の声に耳を傾けず、麴町中の自由な校風が失われている」との危機感があるという。

 麴町中は14~19年度、著書「学校の『当たり前』をやめた。」(時事通信社)で知られる工藤勇一元校長の下で改革が進められ、定期テストや宿題、固定担任制を廃止した。私服登校も許されていた。

 こうした方針がメディアで大きく取り上げられたことで、区域外からの転入も相次いだ。

 23年度に着任した堀越校長は、「麴町中の立て直し」を宣言。学校の配布資料などによると、23年度から定期テストが段階的に復活したほか、服装も24年度の新入生は「標準服」の着用が基本となっている。生徒数は減り、一部には反発も広がっている。

 堀越校長は麴町中のHPでダンス部の騒動について「取材は一切受け付けていない」としている。【西本紗保美】

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