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静岡・沼津のアーケード名店街、解体前に見学会 独特な形、受賞歴も

毎日新聞 2024年8月26日 17時21分

 歩道の上に建物の2階以上が張り出す独特の形をした静岡県沼津市街地にある「アーケード名店街」(同市町方町)の一角が再開発のため取り壊されることになり、26日、解体前の見学会が現地で開かれた。戦災復興のため1953年に西側が、翌54年に東側が完成したが、築70年が経過し老朽化が進んでいた。

 アーケード名店街はJR沼津駅の南約500メートルの場所にある。戦災復興の区画整理のため、幅20メートルの都市計画道路建設が計画されたが調整が難航。建物の1階部分を3・75メートル奥に引き下げて歩道とし、2階以上は屋根のように歩道上に張り出す建築様式を採用することで決着した。地権者は建物の高さや建物前面の柱の間隔などをそろえる協定を結び、整然とした街区が誕生した。54年の日本建築学会賞も受賞している。

 完成当時、商店街は“商都”といわれた沼津最大の繁華街だった。再開発組合の水口隆太理事長(69)は「食料品はもちろん、薬局や寝具店、時計店、荒物屋などバランス良く店がそろい、中心に松菱沼津店(73年閉店)もあった。さながら『横のデパート』だった」と懐かしむ。しかし、徐々に人の流れは駅前の仲見世商店街や57年開店の西武沼津店(2013年閉店)に移動。近年はシャッター街と化していた。

 再開発計画は、約1・8ヘクタールの名店街のうち西側の一角約0・3ヘクタールを取り壊し、地上10階地下2階の延べ床面積1万2520平方メートルのビルを建築するもの。地下が駐車場、1階が商店、2~10階が105戸のマンションになる。総事業費約79億円。28年度完成予定。14年に準備組合が再開発を提案した時点では名店街全体を取り壊し、4~6階建てビルを計8棟建設する壮大な内容だった。しかし「区画が広すぎ、盛り込めるものを盛り込んだ期待が大きすぎる計画」(水口理事長)だったため現実的な線に落ち着いたという。

 見学会には、かつてのにぎわいを懐かしむ地元の年配者や建築の専門家らが訪れ、防火建築のコンクリート壁や相互に行き来できる屋上など建物の内外を見て回った。水口理事長は「耐震強度もなく現在の建物は不安材料しかなかった。再開発で居住人口が増えることで市街地の新たな役割が担えれば」と話した。見学会は27日も午前10時から午後3時まで開かれる。予約は不要で、現地の再開発組合事務所で直接申し込む。【石川宏】

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