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「抜歯しようとしただけなのに…」 麻酔で死亡、診療所に募る不信感

毎日新聞 2024年8月26日 18時43分

 全身麻酔での抜歯中に府立特別支援学校高等部3年だった富川勇大さん(当時17歳)を低酸素状態に陥らせて死亡させたとして、堺市重度障害者歯科診療所(堺市堺区)の医師2人が業務上過失致死の疑いで大阪府警に書類送検された。

 「抜歯しようとしただけなのに、なぜこんなことが起きたのか。今も毎日考えている」。死亡した富川勇大さんの父勇雄さん(48)は、こう言って悔しさをあらわにした。

 特別支援学校の友人や教諭に「トミー」の愛称で慕われていた富川さん。180センチを超える長身で、俳優やモデル、警察官の仕事に憧れていた。

 別の診療所で治療を受けていた富川さんは、治療機器の音や痛みに敏感だった。このため、全身麻酔が可能な堺市重度障害者歯科診療所で親知らずを抜くことになった。しかし、麻酔後に低酸素状態になり、搬送先の病院で帰らぬ人となった。

 勇雄さんら家族は、病院で富川さんの手をさすり続けて回復を祈った。「頑張れよ」と声をかけると、富川さんの目から涙が流れることもあったという。「『痛いよ、苦しいよ』と訴えているようで、つらかった」と勇雄さんは振り返る。

 富川さんが死亡した原因を診療所に何度も尋ねたが、納得できる答えは得られていない。勇雄さんは「障害者を受け入れてくれる診療所のような場所は、なくてはならない場所だ」としつつ、「今回の捜査結果を受け止め、二度と同じことが起こらないように対策を考えるべきだ」と訴えた。【林みづき】

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