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少年院でワイン用ブドウ収穫 更生して「家族・友人と飲みたい」

毎日新聞 2024年8月27日 6時30分

 茨城県牛久市にある少年院「茨城農芸学院」で26日、職業指導の一環として在院少年らが育てたブドウの収穫があった。この日、収穫されたブドウは約120年の歴史がある地元のワイナリー「牛久シャトー」で今後醸造され、2025年春に地元産ワインとして同シャトーの店頭などに並ぶ。

 同院に入っているのは知的能力に制約がある15歳から20歳未満の少年ら約80人。広大な敷地の一角に8棟のビニールハウスがあり、ブドウ2種計364本を栽培している。

 この日は少年ら15人が参加。ワイン用ブドウの「メルロー種」を一房一房丁寧に摘み取ってはカゴに入れていた。牛久市の沼田和利市長やシャトー関係者らも作業に加わり収穫の喜びを共有した。

 同院でのブドウ栽培は20年から職業指導の一環で始まった。シャトーの技術者らが指導役を担い、23年夏には約600キロを収穫。今季は2~3倍の約1500キロを収穫した。

 昨季分は「牛久葡萄(ぶどう)酒Merlot2023」として24年5月から販売が始まり、「まろやかでさわやかな味わいが好評だ」(川口孝太郎社長)という。今季分も同銘柄で1本(750ミリ)4000円で売り出す予定だ。

 参加者の一人(19)は報道陣の取材に「ブドウ栽培は子育てと同じ。愛を持って育てたブドウがワインとなって多くの人に届くのが楽しみ。24年のワインが売り出されたら大切な家族や友人と共に飲みたい」と笑顔を見せた。また、別の少年(17)は「収穫は感慨深かった。ブドウ栽培を経験し、将来農業をしたいと思った。汗水流して作った農作物がたくさんの人に食べてもらえると思うとうれしい」と話した。

 指導にあたった中橋文弥法務教官(48)は「作業は(クモの巣や虫を取るなど)地味な作業の連続だが、自分たちが育て、収穫したブドウが製品として市場に出回ったと知れば職業としての農業を実感できる。生徒が将来このワインを買えるだけの経済状態を手にし、自らを理解してくれる家族や仲間に囲まれて暮らしてくれていたら」と期待した。【鈴木美穂】

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