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ぼんぼろう、能登 「聖地」のノートにあふれた復興願う言葉

毎日新聞 2024年8月31日 9時0分

 アニメファンに「聖地」として知られる第三セクター・のと鉄道の西岸駅=石川県七尾市中島町外(そで)=の寄せ書きノートに、能登の復旧・復興を願うメッセージが続々と書き込まれている。無人駅に置かれた帳面に、アニメ作品中で誕生した言葉を使って、来訪者と地元被災者が、前向きなメッセージ交換を続けている。

 同駅は七尾湾岸に位置し、近くの高台から吹く風にちなみ「小牧(おまき)風駅」という愛称もある。2011年放映のテレビアニメ「花咲くいろは」に登場する駅のモデルとされる。

 のと鉄道によると、帳面はファンが自主的に置いているもので、「聖地巡礼ノート」と題され、昨年12月に44冊目になった。

 元日午後1時51分、「結婚おめでとう!」と知人あてとみられる温かなメッセージが書き込まれた。その2時間余り後、大地震が能登を襲った。道路が寸断され大規模停電が続く中、2日後に「ノートなどが無事で何より。身の安全を第1に、助け合いましょう」などの書き込みがあったのを最後に更新は停止していた。

 風向きが変わったのは、同駅を含む区間がまだ運行休止中だった3月12日。訪れたファンが「ぼんぼろう、能登」と書いてからだ。

 「いろは」の作品の中で、登場人物が、ぼんぼりを洗いながら「ぼんぼる」と自らの誓いを口にする場面があった。願いをかなえるために努めることを示すもので、「頑張る」という意味の造語として、ファンの間で使われるようになった。ノートでは直後に「地元民」が「必ず、必ず立ち上がります」と、応える書き込みをした。

 そして4月の同線全線開通を機に書き込みは一気に増えた。「神戸より」「北九州から」「復興支援で宮城県から来ました」。ボランティア活動のため訪れた人が多く、「ぼんぼりましょう~」「ボンボるエールを日々送ります」などの書き込みが相次ぎ、中には方言交じりで「ぼんぼっていかんかいね!」と記した人も。5月以降は、韓国語や中国語のメッセージも登場するようになった。

 地元にとって通学や通院に欠かせない駅で、列車待ちの間に読みふける人も。「応援ありがとうございます。能登のみんな、ぼんぼります」と感謝を記した駅利用者もおり、エール交換の場になっている。

 西岸駅は、昨年放映されたアニメ「君は放課後インソムニア」の舞台にもなっており、そのファン用のノートも置かれている。のと鉄道の担当者は「みなさんの善意の塊。大切にしていきたい」としている。【竹中拓実】

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