Infoseek 楽天

無罪男性のDNA抹消請求、国側の控訴棄却 名古屋高裁、1審を支持

毎日新聞 2024年8月30日 15時39分

 無罪判決が確定した男性が国に対し、捜査時に採取された指紋やDNA型などを警察庁のデータベースから抹消することなどを求めた訴訟の控訴審判決が30日、名古屋高裁であった。長谷川恭弘裁判長はデータの抹消を命じた1審・名古屋地裁判決を支持する判決を言い渡した。判決は男性のDNA型などをデータベースに保管していることについて「(個人の尊厳を定めた)憲法13条に基づく原告の人格権を侵害していることは明らか」と違憲性を指摘。DNA型の保管などは現在、国家公安委員会の規則や警察庁通達に基づき運用されているが、「憲法の趣旨に沿った立法による整備が強く望まれる」とした。

 判決はまた、原告が求めていた国や愛知県の賠償責任については1審同様に棄却する一方、男性から暴行を受けたと虚偽の証言をしたとして、建設会社の従業員と会社に計220万円の損害賠償を命じた。

 国は1審で「DNA型などを利用することで、良好な治安維持に資するといった犯罪捜査によって得られる国民の権利利益が大幅に制約される」と主張していたが、長谷川裁判長は「抽象的な『余罪』の捜査を正当化の根拠とすることは治安維持優先の発想であり、基本的人権が軽視され、自由であるべき国民の行動が萎縮させられるなど、逆に国民の権利利益に反することになる」と指摘。「国民の基本的人権を軽視し、憲法上の制約を受けることはないなどとして行政運営を行っているのであれば、大きな問題である」と批判した。

 判決によると、原告の薬剤師、奥田恭正さん(67)は2016年10月、マンション建設反対運動中に現場監督に暴行したとして逮捕、起訴され、DNA型などを採取された。現場監督の証言も逮捕の決め手となっていた。だが、名古屋地裁は18年2月、防犯カメラの映像などから暴行の事実を認める十分な証拠はないとして無罪判決を言い渡し、確定。奥田さんは同年7月、捜査で採取されたDNA型などのデータベースからの抹消を求め提訴し、1審判決(22年1月)は各データの抹消を命じた。

 警察庁は「今後、判決内容を精査して、関係機関とも協議しながら対応を検討してまいりたい」とコメントした。【道下寛子、川瀬慎一朗】

この記事の関連ニュース