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台風で停電発生したら…熱中症のリスクも 今からできる対策は?

毎日新聞 2024年8月30日 14時43分

 2019年9月に千葉県に上陸し、大きな被害をもたらした台風15号(令和元年房総半島台風)は、関東を中心に最大90万戸以上が停電し、復旧までに約20日を要した。エアコンが使えず、熱中症で亡くなる高齢者も相次いだ。まだまだ暑い日が続く。今、台風や地震で停電が起きた場合、どんな対策があるのか。

 「停電で人は亡くなるんですね」。千葉県浦安市在住の防災アドバイザー、岡部梨恵子さんは、房総半島台風で亡くなった人々の遺族を訪ねたときに、そんな言葉を聞いた。

 夏場の停電を甘く見れば、熱中症で命を落としかねない――。そう痛感したという。

 岡部さんによると、停電時に最も心強いのが「ポータブル電源」だ。持ち運び可能なバッテリーの一種で、コンセントに差し込んで電気器具を使用できる。キャンプなどアウトドアで使う人が多いが、非常時の電源になる。

 ただ、動かせるのは扇風機程度。エアコンを回せるほどの大型の電源になると、数十万円と高価なため一般家庭では用意するのは難しい。

 エアコンが使えないときはどうすればいいのか。岡部さんが薦めるのは、室内の空気を循環させる「サーキュレーター」だ。空気をかき混ぜることによって部屋の温度を下げる。充電式のタイプが停電時に役立ち、強風モードでなければ数日間稼働するものもある。

 もう一つ、暑いときの停電対策で、岡部さんが重視するのは冷蔵庫の活用だ。

 停電すればもちろん冷蔵庫としては使えない。しかし、2リットルのペットボトルに水を入れて冷凍庫で凍らせておけば、停電時に取り出して、ほてった体を冷ますのに使える。溶けた水は断水時には貴重だ。

 凍ったペットボトル水を冷蔵庫の中の一番上の段に置けば、電気がなくても「氷冷蔵庫」になる。

 「保存用の水の一部を冷凍庫に置くだけ。備蓄スペースも減らせる」と話す。

 食品で冷蔵庫の中はいっぱいという家庭も少なくない。その場合、ケーキの購入時などに付いてくる保冷剤を冷凍庫の隙間(すきま)にぎっしりちりばめて保存しておけば、停電時でも冷凍庫がそのままクーラーボックスのようになる。また、保冷剤や冷凍食品の一部を冷蔵スペースの上段に移せば、冷蔵スペースの食材の持ちを良くすることもできる。

 暑さとは直接関係ないが、情報収集や連絡手段になるスマホのモバイルバッテリーも必須。スマホを2・5回程度充電できる1万ミリアンペア時(mAh)以上が購入時の目安という。

 スマホはできるだけ電源を切って電力消費を抑えたい。その際の情報収集用にラジオもほしい。夜間の停電に備え、懐中電灯も必要だ。

 進路の予想がつく台風が近づいている場合は、「すぐにでもしてほしい対策がある」と岡部さんは言う。

 まずは、自宅の窓ガラスに段ボールを養生テープで張り付けて簡易的に補強する。窓ガラスが割れて屋内に浸水したり、破片でけがをしたりするのを防ぐためだ。

 風呂に水をためておくことも大切だ。断水時でも体を拭いたり、トイレを流したりするのに使える。すぐに食べられるおにぎりなど食材の準備もあると安心だという。

 岡部さんは「すべて一気に対策をやろうとすると、気がめいり、結局手つかずになってしまうので、すぐにでもできることから防災備蓄に取り組んでほしい」と話した。【稲垣衆史】

 岡部さんは防災備蓄術のブログ(https://ameblo.jp/keinaonao/)で対策方法を発信している。

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