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津軽三味線で世界大会出場の機動隊員「講話でも特技生かしたい」

毎日新聞 2024年9月1日 14時0分

成田涼真さん(24)

 青森県の津軽地方で生まれた津軽三味線は、弦を激しくたたく豪快なバチさばきと繊細な旋律が特徴だ。関東管区機動隊員の成田涼真巡査(24)=神奈川県警藤沢署=は、10代で全国大会を連覇した名手。警察官拝命後は三味線から一時遠ざかったが、激務の傍ら今年、世界大会に初出場した。異色の奏者が語る三味線の魅力とは。【柿崎誠】

 ――始めたきっかけは。

 ◆青森県弘前市出身で、祖父(美津治さん、87歳)が津軽民謡の歌い手であり、津軽三味線の弾き手でもありました。気づいたら自分も5歳の時に三味線を手にしていました。

 ――71歳で亡くなった祖父の弟(武士さん)もプロの民謡歌手だったそうですね。

 ◆小さい頃に三味線を教えてもらいました。地元の弘前市では「まんじ流」家元の工藤満次さん(80)に師事しました。楽譜はなく、師匠のバチのたたき方を目で見て音を聞き、弦を押さえる場所を覚えます。何度も練習し、やっとの思いで音が出る感覚です。

 ――上手になったと手応えを感じる時はありましたか。

 ◆津軽三味線は弦をはじくのでなく、バチでたたく打楽器的な奏法が特徴です。その激しさが他の弦楽器に無い魅力ですが、稽古(けいこ)を重ねるうち、小学校高学年ごろから上達を感じるようになりました。高校1、2年の時には全国大会の中高生部門を連覇しました。

 ――なぜ警察官を志したのですか。

 ◆人の命を守る仕事に就きたいと考えていました。中でも警察は刑事や交通、警備、生活安全など各部門でいろいろな経験ができるところにやりがいがあると思いました。地元に残ることも考えたのですが、私は陸上競技をしていたこともあり、正月の箱根駅伝を陰から支える神奈川県警にひかれ、地元を離れて働こうと思いました。さらに、三味線仲間やプロの奏者が首都圏に多数いることも決め手になりました。

 ――奏者としても経歴を積みたかったのですか。

 ◆警察学校に入校後の約10カ月は無我夢中に勉強して三味線には一度も触れられませんでした。その後は趣味程度に弾いていましたが、2023年1月の武道始め式で初めて署員らを前に披露させてもらいました。署内の行事で弾く機会にも恵まれ、少しずつ仕事にも慣れたことや周囲の後押しもあり、休日にカラオケボックスを利用して本格的に練習を重ねています。5月の大型連休に弘前市であった「第42回津軽三味線世界大会」に初めて挑戦しました。高校生以来7年ぶりの大会出場です。入賞はできませんでしたが、全国を見渡すと、無報酬でプロボクサーとして活動する警察官もいます。私も趣味にとどめず、自分らしい特技として津軽三味線の知名度をもっと上げたいです。

 ――署の幹部からは三味線を生かした職務に期待する声があるようです。

 ◆特殊詐欺防止の講話や交通安全教室は、参加者を飽きさせないことが重要です。三味線の旋律を織り交ぜながらの講話など、特技を仕事でも生かしたいですね。

 ■人物略歴

成田涼真(なりた・りょうま)さん

 2000年、青森県弘前市生まれ。20年に県警に入り、初任地が藤沢署。交番勤務を経て警備課直轄警察隊(機動隊)に配属。部隊では花火大会の雑踏警備などにあたる。高校時代は陸上競技の110メートルハードルの選手として青森県大会入賞の経験も。津軽三味線で、思い入れのある一曲は「津軽じょんがら節」。師匠の工藤さんは「超一流のプロになる素質がある」と評する。

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