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水枯れした川周辺の地下水調査せず 北海道新幹線工事で運輸機構

毎日新聞 2024年9月8日 5時30分

 新青森―新函館北斗が開業している北海道新幹線の札幌延伸工事を巡り、建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構が、川の水枯れなどが起きた地域で地下水のモニタリングをしていなかったことが判明した。環境影響評価(アセスメント)手続きで北海道が求めていたモニタリングの対象は機構側に委ねられていたが、対象外の地域では水枯れなどにより農家への被害が生じており、調査対象が不十分だった可能性がある。

 水枯れが起きたのは黒松内町南部の「神社の沢川」。現在は直下を通る内浦トンネル(約15キロ)の掘削工事が行われている。鉄道・運輸機構は6月13日に川の水枯れを確認した。

 この影響で近くの畜産農家1戸が川から営農用水を引けなくなる被害が出たが、機構は「井戸などの利用状況はない」として地下水位などの調査をしていなかった。

 北海道新幹線は1973年に国が整備計画を決め、98年に法律に基づく環境アセスが始まった。

 2000年、当時の堀達也道知事は環境アセスの準備書に対する知事意見を公表。地下水について、トンネル工事現場周辺で水位低下が懸念されるとした上で、事前の調査やモニタリング計画の公表を求めていた。

 鉄道・運輸機構は知事意見に基づき、工事着手の条件となるアセス評価書を作成。工事の影響範囲などを調べ、井戸水などの利用に影響のある地点を調べるモニタリング計画を年1回公表している。

 だが、神社の沢川のほかにも、流量減少が起こったニセコ町の都築川周辺でも地下水の調査をしていなかった。この川でも近くの農家1戸の営農用水が減る影響が出た。

 機構は工事との関連を調査しており、担当者は「今後の対応は調査結果が出てから検討する」としている。

 地下水の構造に詳しい岐阜大の神谷浩二教授(地下水工学)は「トンネル周辺の地下水位などの詳細なデータがないと工事と水枯れの因果関係の判断が難しい」とした上で、「工事が原因だと考えられるのであれば、早期に自治体が地域住民に寄り添い、事業者と協議していくことが重要だ」と指摘した。【片野裕之】

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