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山形から滋賀に贈られた楽器 遠く離れた「音」をつなげた意外な物

毎日新聞 2024年9月8日 12時30分

 山形の高校の吹奏楽部から滋賀のホールに楽器が寄贈された。東北と近畿の遠く離れた「音」をつなげたのは意外な物だった。【礒野健一】

 楽器が届けられたのは滋賀県守山市の守山市民ホール(同市三宅町)。同市は「音楽の街」を掲げて市民の音楽活動をサポートしており、同ホールはその拠点で中高生の楽団も運営している。贈り元は学校統合で来年3月に122年の歴史に幕を閉じる山形県立米沢商業高校吹奏楽部。楽器は同ホールが来春設立する小学生バンドで活用される予定で、同ホールの小森慎也副館長(48)は「偶然が重なり、遠く離れた守山と米沢が音楽で結ばれた。この縁を大事に交流を続けたい」と喜んでいる。

 同ホールは2022年に中高生の吹奏楽団「ルシオール・ユース・ウインド・オーケストラ」を結成し、若者たちの音楽活動をけん引。更に音楽の裾野を広げようと、来春には小学5、6年生を対象としたジュニアバンドの設立を決め、団員の募集とともに使わなくなった楽器の寄贈を求めていた。

 その声を聞いたふくさメーカー「清原」(守山市古高町)の清原大晶社長(48)が思い浮かべたのが米沢商だった。同校は25年4月に県立米沢工業高校と統合され、新たに米沢鶴城高校となるため今年度で閉校となる。米沢商の生徒たちは昨年度から「思い出に残る閉校記念グッズを作ろう」とさまざまな商品を企画。そのうちの一つ、制服と同じ生地を使った名刺入れの製造を同社が請け負っていた。清原さんは「閉校になれば楽器類が廃棄されるかもしれない」と小森さんに相談。小森さんが吹奏楽部に打診すると「もらってもらえるならぜひ」との二つ返事。実際、一部の楽器は廃棄予定だったが、名刺入れが縁となった寄贈が決まった。

 今年8月8日、清原さんと小森さん、ジュニアバンドを指導する武藤千尋さん(66)が米沢商を訪れ、部員たちからサックスやトランペット、コントラバスなど計8種9台の楽器を受け取った。楽器は40~50年前に製造されたものが中心で修理が必要なものもあるが、全て十分に使えるものだった。部員たちは「米商の楽器が子供たちに使ってもらえるなんてうれしい」と笑顔だったという。小森さんは「寄贈してもらった楽器で練習する子供たちの写真を送るなど交流を続け、いつか統合後の吹奏楽部を守山に招待し、演奏してもらいたい」と語った。

 ジュニアバンド用の楽器はクラリネットやホルン、チューバなどが不足しており、引き続き楽器の寄贈を呼びかけている。問い合わせは同ホール(077・583・2532)。

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