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「あらゆる手段で基地負担軽減を」 宜野湾市長に復帰の佐喜真氏

毎日新聞 2024年9月9日 18時45分

 「あらゆる手段を講じて、基地負担の軽減を前に進めたい」。米軍普天間飛行場を抱える沖縄県宜野湾市で8日投開票された市長選で当選した元職の佐喜真淳(さきまあつし)氏(60)は一夜明けた9日、こう抱負を語り、6年ぶりに市長に復帰した。佐喜真氏は普天間飛行場の名護市辺野古への県内移設を容認するが、普天間飛行場の返還は移設計画が順調に進んでも12年後。米軍機による騒音被害などは深刻で、市民が実感できる負担軽減を早期に実現できるかが問われる。

 「早く普天間飛行場を返還してほしい。それだけなんです。代替施設で争うことなく、次のステージに行く。それが跡地利用に対する要請だ。(前に)進もうではありませんか」。佐喜真氏は8日夜、3回目の当選を確実にした後、支援者を前にこう呼び掛けた。

 日米両政府が市の中心部にある普天間飛行場の返還に合意したのは1996年。28年が経過したが、県内移設が条件とされたことで経過は紆余(うよ)曲折をたどり、今も実現していない。これまでの市長選でも、政府が進める辺野古移設計画への賛否が繰り返し争点となり、市民は「負担のたらい回し」と言われる同じ県内への移設を認めるか否か、苦しい選択を迫られてきた。

 「意思を示し続けないといけないと思うが、『宜野湾市だけでどうにかできる問題ではないのに』とも思う」。今回の市長選でも、市内の女性会社員(54)は取材に対し、複雑な思いを吐露した。

 選挙戦で佐喜真氏は、辺野古沿岸部で先に埋め立てが完了した区域に普天間所属機を先行移転させたり、常駐機や訓練を県外へ分散移転させたりする負担軽減策を提示。政府に実現を求め、返還を待たずに事故の危険性や騒音の軽減などを図ると訴えた。

 しかし、中国の台頭などで沖縄周辺の安全保障環境は厳しさを増しているとして、日米両政府は南西諸島での共同演習や訓練を増やす方針だ。普天間飛行場でも、他の米軍基地所属の「外来機」の飛来が増加しており、これまでに日米が負担軽減策として実施してきた輸送機オスプレイの訓練移転などの効果を「帳消し」にしているのが現状だ。

 こうした厳しい状況下でも、佐喜真氏は政府・与党との協調関係をてこに、早期の負担軽減を実現することができるのか。長年、基地負担に苦しんできた市民に、実のある成果を届けることが求められる。佐喜真氏は9日、「外交と防衛に関しては国の専権事項だが、市民を代表し、騒音など政府が配慮すべきことはしっかり訴えていきたい」と述べた。【比嘉洋、喜屋武真之介】

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