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人気小説「鞍馬天狗」 誕生100年、横浜で企画展 舞台は幕末

毎日新聞 2024年9月11日 7時45分

 横浜市出身の作家、大佛(おさらぎ)次郎(1897~1973年)の代表作、「鞍馬天狗」の創作過程や人気の広がりに光を当てる企画展「鞍馬天狗 誕生100年」が、横浜市中区の大佛次郎記念館で開かれている。初公開の草稿から子ども向けのお面まで多彩な資料を紹介する。担当者は「100年前に生まれたヒーローを知ってほしい」と話している。来年1月25日まで。

 鞍馬天狗は、幕末を舞台に活躍する正体不明の剣士。大佛が26歳だった1924(大正13)年に、講談風の読み物としてスタートした。

 大佛が鞍馬天狗を書くきっかけは前年に起きた関東大震災という。鎌倉に住み、教員や外務省の嘱託職員をしながら、東京の雑誌に寄稿していたが、震災で雑誌が廃刊に。知り合いの編集者から「時代小説を書いたら見せて」といわれ、試しに初めて書いた時代小説が好評で、2作目の「鞍馬天狗」がシリーズ化されることになった。

 その後、65年まで41年にわたって新聞や雑誌に掲載され、小説は47作品、映画が63作品、テレビドラマも12作品を数えた。

 展示では鞍馬天狗の変化を解説する。当初の設定は、薩摩や長州側に立って倒幕にかかわるが、市井の人との関わりが深まるにつれて、主義や思想より、私腹を肥やす権力者に抗議するようになる。これまでの研究では「大佛の内面が鞍馬天狗に投影されている」という。

 また、11作目から少年雑誌に掲載され、文体も「です」「ます」調になると、子どもたちのヒーローとして絶大な人気を博した。

 展示は2章構成で、第1章では、初公開の第5作「影法師」(24年)の草稿や、鞍馬天狗の書籍、口絵原画などを展示。第2章は、メンコやお面のほか、子どもからのファンレター、映画ポスターなどを並べる。

 研究室職員の金城瑠以さんは「40年書き続けられたキャラクターは珍しく、鞍馬天狗の変遷と作者の成長を想像しながら見てほしい」と話している。

 休館日は、毎週月曜(祝休日の場合は翌日)と年末年始。観覧料は大人200円、中学生以下無料。【遠藤和行】

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