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雨宮処凜さん、新著で日本の難民の実情紹介「共生考えるきっかけに」

毎日新聞 2024年9月13日 10時30分

 日本に暮らす難民申請をしている人や移民などの実態を記した著作が刊行された。著者は、生きづらさや貧困問題をテーマにした著作の多い作家の雨宮処凜さん。341万人の在日外国人が暮らす日本。「お隣さん」の難民・移民の実情を知り、共生を考える一冊となった。

 タイトルは「難民・移民のわたしたち~これからの共生ガイド」(河出書房新社・税込み1526円)。同社が10代に向けた「14歳の世渡り術」のシリーズとして作られた。雨宮さんは「若い人はこれまでよりたくさんの外国人と暮らすことになる。共生を考えるきっかけになれば」と語る。

 雨宮さんが難民・移民問題に関心を持ったのは、コロナ禍での生活困窮者の支援活動がきっかけ。食料配布や医療相談などの支援現場には、日本人と共に多くの外国人が殺到した。アジア、アフリカ、中東など地域を問わず訪れ、親子連れも多く、中には住居を失い野宿状態の人もいた。支援団体などと共に聞き取りをすると、多くが母国で迫害を受けて訪日し、難民申請をしている人だった。

 難民申請が却下されると、出入国在留管理庁(入管)の施設に収容され、収容が解かれると仮放免となる。だが、仮放免では働く事は許されず、県境をまたぐ移動には入管の許可が必要だ。多くの人が収入がなくなり、生活に困窮している。

 本では、母国でどのような迫害を受けて難民となり日本に逃れてきたのか、仮放免の状況が心や生活にどのような負担になっているかを紹介している。

 滞在期間が長い申請者には、日本で生まれ育った子どもがいるケースがある。2022年11月の集会では仮放免の女子高校生(当時16歳)の声が紹介された。女性は「自分は周りにいる友達とは全然違って、生きる権利を持っていないことを知りました」と言った。高校を出ても就職できず、健康保険も使えず、自由に移動もできないのだ。

 そうした難民の子どもたちのリアルな生活を伝えている。難民を支える支援団体の活動、世界に比べて難民認定率の低い日本の入管行政についても言及。最終章では、難民・移民の人たちにできることを紹介している。雨宮さんは「難民や移民を知ること、出会うことが共生のためには大事。この本がそのきっかけになれば」と話している。【東海林智】

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