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「ジョージア映画祭」の会期延長 山口智子さん企画の短編も披露

毎日新聞 2024年9月27日 22時6分

 黒海の東に位置し、旧ソ連時代から数々の映画を生み出してきたジョージア(グルジア)に光を当てた「ジョージア映画祭2024」が東京都渋谷区円山町1のユーロスペースで開かれている。普段、見る機会がほとんどないジョージア映画の秀作をそろえているため、来場者が引きも切らず、会期(8月末~今月27日)を10月4日まで延長することになった。特別企画として俳優、山口智子さんの企画で制作された短編「LISTEN. ジョージア篇 “UNITY 結束”」も28日から披露される。

 ジョージア映画祭は、日本のミニシアター文化の礎を築いた東京・神保町の岩波ホール(すでに閉館)に長く勤務し、ジョージア映画に造詣が深い画家の原田健秀(はらだ・たけひで)さん(70)が企画し、今年で3回目だ。

 祖母、母、自分と親子3代、映画監督で、同映画祭に合わせて初来日したサロメ・アレクシさん(58)によると、「旧ソ連時代の圧力や厳しい検閲が、この国の映画人を鍛えてきた」という。注目の作品は、サロメさんの母で戦後のジョージア映画の発展に尽力したラナ・ゴゴベリゼ監督(95)の最新作で、サロメさんが共同監督を務めた「母と娘 完全な夜はない」。ラナさんの母ヌツァさんは、ジョージア初の女性監督として知られ、同作は、ヌツァさんと過ごした日々を、ラナさん自身の語りと映像で紡ぐ。

 さらに、ヌツァさんの作品「ウジュムリ」など1930年代の貴重な2作品も。「ウジュムリ」は、河川工事をめぐる体制側と地元住民のあつれきを描き、完成後、ヌツァさんはスターリンによる粛清で約10年、流刑の地で過ごした。

 旧ソ連の崩壊を機に、パリの映画学校に留学して「西洋の空気を吸った」というサロメさんは、「旧ソ連時代、母は映画の脚本が完成するとモスクワの当局に持参した。厳しい検閲は受けたが、自分が表現したいことをさりげない映像に託すなど、さまざまな手段を講じていた」と回想。ジョージアは91年に独立したが、「その後も内戦や紛争による混乱が続いた。この国はまだまだ家父長制が根強い部分があり、そこをどう描いていくかは私自身のテーマの一つでもある」。

 そのほか、ジョージア映画人同盟代表を長く務めたエルダル・シェンゲラヤ監督(91)ら名匠の作品がプログラムに入っている。

 一方、今回の延長にあたって特別上映される「LISTEN.ジョージア篇 “UNITY 結束”」は、山口智子さんが主宰する音楽プロジェクト「LISTEN.」(リッスン)の一環で、ジョージアのスプラ(宴会)での合唱風景などを収録した。山口さんは世界の音楽文化を映像ライブラリーに収める同プロジェクトを2010年から続け、この作品を含め、さまざまな国の音楽短編映像(計約30作品)をつくり、長編映画版「LISTEN.」の上映も始まっている。

 ジョージア映画について、山口さんは「この映画祭のことを知人から聞き、今回、初めて鑑賞した。数々の作品に魅了された」という。

 原田さんは、「ジョージアの映画人が、旧ソ連時代に人間性を失わず、自由を求めて表現し続けてきたことを感じてほしい」と力を込める。詳細は同映画祭のホームページ。【明珍美紀】

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