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「画期的だった」 AI開発に初のノーベル賞、驚きと称賛の声

毎日新聞 2024年10月8日 22時42分

 2024年のノーベル物理学賞に、人工知能(AI)開発の基礎を築いた米国とカナダの2人が選ばれた。AIの分野がノーベル賞に輝くのは初めてで、関係する研究者らからは、驚きと称賛の声が相次いだ。

 「情報系だとノーベル賞に縁はないと思っていたので驚いた」。産業技術総合研究所の村川正宏・人工知能研究センター副研究センター長(機械学習)はこう述べ、驚きを隠さなかった。

 人工知能学会会長の栗原聡・慶応大教授も「コンピューターなどのITや情報技術に関連する研究がノーベル物理学賞を受賞するのは初めてだと思う。意外だった」と取材に語った。

 これまでのノーベル物理学賞は、ミクロの世界や宇宙の仕組みを調べる「素粒子物理学」や「宇宙物理学」、物質の性質を調べる「物性物理学」といった、ものごとの成り立ちを探究する分野が受賞してきた。AIはそれに比べ「応用」だとみなされてきた。

 ただ、AIの基礎である機械学習の開発で2人が使ったのは、物理学の基礎的な分野の一つである「統計物理学」という手法だ。原子や分子など、多くのミクロの粒子のふるまいを予測したり計算したりする分野で、これを使って、人の脳の仕組みを模擬しようとしたのだ。

 「根っこは物理にあって、その現象をまねしたのが画期的だった。新しいブレークスルーにつながっている」。村川さんは受賞の意義をこう話す。

 コンピューターの能力の発展とともに、AIは爆発的に進歩、普及した。文章や画像を生み出す生成AIが誕生したほか、物理学や生命科学などの科学の基礎的な分野にも欠かせないツールとなっている。

 AIを活用して物理学を研究している京都大の橋本幸士教授は「ノーベル賞は自然現象の説明や自然法則の予言に対して与えられてきたが、AIへの物理学の応用が爆発的な成功の基盤となったことに対して賞が与えられたことを称賛したい」とたたえた。【中村好見、信田真由美、寺町六花】

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