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「平和賞きっかけに、今度こそ」長崎の被爆者、核兵器廃絶の実現願う

毎日新聞 2024年10月11日 21時7分

 「長年の忍耐の結果、受賞できることになり、本当に素晴らしい」。長崎原爆で被爆した、被爆者団体「長崎県被爆者手帳友の会」会長で医師の朝長万左男(ともながまさお)さん(81)=長崎市=は感慨深く語った。

 受賞決定の背景を朝長さんは、ロシアのウクライナ侵攻やイスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃など、世界各地で紛争が絶えない現実があるとみる。「今回は『ありがとうございました』というだけの授賞では絶対ない。核なき世界に向け、もうワンステップ進めるために活動を続けてほしいという要請もあるのでは」と話す。

 世界各地で軍拡の動きが進む中、朝長さんは「今回の受賞が日本被団協や被爆者がもう一度、核兵器廃絶に向けて声を上げるきっかけになる」と指摘。「核兵器国の国民には被爆者の証言から核兵器の非人道性を理解し、各国の政府に核をなくすよう要求してほしい」と願った。

 長崎原爆で、妊娠中だった母親のおなかの中で被爆した胎内被爆者、中野陽子さん(78)=福岡県福津市=は「被団協の方たちは長年、核兵器廃絶を願って一生懸命頑張ってこられただけに、平和賞が決まって良かった」と声を弾ませた。

 被爆79年を経て核兵器廃絶は実現せず、収束の見えない世界情勢に憂いは強く「核は1発も使ってはならない」と語気を強める。「核兵器廃絶を期待してきたが、今まで何度も裏切られてきた。平和賞がきっかけになり、今度こそうまくいけば良い」と祈るように語った。

 被爆者団体「長崎県平和運動センター被爆者連絡協議会」の川野浩一議長(84)=長崎県長与町=は「世界で核兵器使用の緊張が高まっている中、核兵器廃絶をしなければならない、核兵器を絶対に使ってはならないという世界へのメッセージだ」と語った。【森永亨、青木絵美】

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