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大阪弁で楽しく深く TBS「落語研究会」新解説者の宮信明さん

毎日新聞 2024年10月16日 17時30分

 1905年から中断も挟んで現在まで続く由緒ある落語会「落語研究会」(TBSテレビ)の新しい解説者に、京都芸術大准教授の宮信明さん(43)が決まり、20日午前4時の放送分から登場する。「落語を知らない人にも見てもらいたい。落語を見てみようかな、と思えるような話をしたい」と宮さんは話す。

 2006年から解説を担当した京須偕充(ともみつ)さん(82)から引き継いだ。相手の赤荻歩アナウンサーも43歳で、まだ「ちゃぶ台」が似合わない若い2人だが、宮さんは「(番組担当者は)研究者にお願いをしたかったようです。落語をマニアックに語るよりも、文化の一つとして客観的に語れるみたいなところがよかったのではないか」と言う。

 大阪市の出身。「大阪の子供なのでお笑いはもともと好きで、祖父が吉本興業の株を持っていたので月に2枚ぐらいチケットが送られてきて、学校さぼって朝から晩まで、なんばグランド花月の一番前の席で楽しんでました。『お兄ちゃん、上がっといで』と、何度か舞台に上げてもらえました」

 そこで最初に見た落語が笑福亭仁鶴さん。「びっくりしました。声も張らず、ぼそっとしゃべるだけなのに、お客さんは大爆笑。すごいなと思いました」。そこから落語に興味を持ち、桂米朝さんの独演会に行ったり。「ABCテレビの枝雀寄席はハガキで応募しますが、子どもなんでいつも当たるんです。客層がばらけたほうがいいということなんでしょう。高校生の頃には米朝師匠の本を読み始めました」

 慶応大文学部に進み、フランス文学専攻で「金原亭駒ん奈」の名を持つ荻野アンナさん(現名誉教授)のゼミへ。「フランス文学史なのに、(柳家)小三治師匠や(金原亭)馬生師匠が来た。そこで日本の芸能を研究したいという気持ちが湧いてきました」

 立教大大学院から早稲田大の演劇博物館(演博)へ。「演博では資料の公開や展示をしないといけない。そこで、外部との関わりが広くなり、一般的な研究者では経験しないことができました」

 16年には企画展「落語とメディア」を開催した。岡室美奈子館長(当時)から「落語がおもしろいと言われているところで、江戸時代や明治時代の落語展をやってはダメ。着地を現代に持ってきてほしい」とアドバイスされ、まず企画したのが大隈講堂での柳家小三治さんの落語会。「本当は弟子の柳家喜多八さんとの二人会の予定で、落語を知らない学生に見せたかった。喜多八さんの体調不良で二人会はかないませんでした」

 トークイベント「柳家喬太郎×『昭和元禄落語心中』」では、喬太郎さんが「死神」を披露。「落語ファンにはアニメを、アニメファンには落語を知ってもらうきっかけづくりをしたかった」。さらに若手の会を早稲田で開いた。「授業をやりながら、学んでほしいという一方で、寄席行ってほしい、落語会に足を運んでほしいという気持ちが強かった。ある程度自分の好きなことをやれたのはラッキーでした」

 着物でも背広でもないラフな服装。番組ではどんな解説になるのだろう。「京須先生は一言一言に説得力、重みがあった。私はそうはいかないので、どちらかといえば、落語ってこういうふうに見るとおもしろいですよねとか、こういう見方もありますよね、ということをまず申し上げたい。あと、ちょっとした豆知識を付け足すことで、楽しみ方をもう少し深くしたい。落語をちょっと見てみようという人が、私と赤荻さんの話を聞いて、そうか、それなら楽しみに見てみよう、というようなお話になればいいかなと思っています」

 話をうかがっていると、宮さんは関西の言葉だ。「大阪弁が薄くなってきてると思ってますが、学生は『全然そんなことはない』と。『東京の落語研究会の解説がどうして大阪弁なんだ』というツッコミは入るとは思いますが」

 ちなみに、「最初の解説はめちゃめちゃ緊張したので2回撮りました(笑い)。私は同世代やそれより下の世代の人たちを応援したい。何か自分で応援できることがあるのかなというときに、たとえば解説書いてくださいとか、ちょっと出てくださいと言われれば、時間があれば行きますよ」という。【油井雅和】

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