SNS(ネット交流サービス)で著名人になりすました虚偽広告を放置したとして、首都圏や関西圏などの30人が29日、フェイスブックやインスタグラムを運営する米IT大手メタと日本法人に損害賠償を求め、全国5地裁に一斉提訴した。広告にだまされて詐欺被害に遭ったと訴えており、請求額は計約4億3500万円に上る。
提訴先は大阪や神戸のほか横浜、千葉、さいたまの各地裁。神戸では先に4人が賠償を求めており、メタ社側は「広告の真実性を調査・確認する義務はない」と争う姿勢を示している。
訴状などによると、大阪地裁に提訴した40~60代の8人は2023年4~12月、実業家の前沢友作氏や堀江貴文氏らを名乗り、「優良株ベスト5を教えます」などと投資を呼びかけるうその広告を閲覧した。
広告をクリックすると、無料通信アプリ「LINE(ライン)」でのやりとりに誘導され、外国為替証拠金取引(FX)や仮想通貨(暗号資産)への投資として現金を送金した。計1億円超に上る原告もいるが、現金は戻ってきていないという。
原告側はメタ社について、広告を審査する義務があるのに放置し、広告料を得ながら詐欺被害を引き起こしたと主張。23年半ばごろには著名人らがなりすまし被害を訴えていたのに本格的な対応を取らなかったとしている。
提訴後、大阪市内で記者会見した弁護団長の国府泰道弁護士は「虚偽広告をしっかり審査すれば被害を防げたのではないか。多くの登録者がいる身近なサービスであり、企業としての社会的責任がある」と強調した。今後、追加提訴も検討しているという。
メタ社は「個別の訴訟に関してコメントを出す予定はございませんが、詐欺広告に対する取り組みを強化し、あらゆる角度から踏み込んだ対策と措置を講じています」とコメントした。【土田暁彦】