太陽光パネルを共同購入して発電を委託すれば売電収入が配当として得られるなどとうたい、国が原則禁じる販売預託商法を行ったとして、大阪府警は30日、再生エネルギー業「チェンジ・ザ・ワールド」(山形県酒田市、破産手続き中)元代表の池田友喜容疑者(47)=東京都中央区=ら同社関係者6人を預託法違反(売買契約の締結など)の疑いで逮捕した。府警によると、販売預託商法を原則禁じた2022年6月の預託法改正以降、業者が刑事責任を問われるのは初めて。
チェンジ社は少なくとも約1万人から資金を集めた後、約38億円の負債を抱えて経営破綻。府警は販売預託商法が原則禁止されて以降、同社が事業停止までの半年間に約3800人から約12億円を集めていたとみており、使途解明を目指す。
販売預託商法は会社が客に購入させた商品を預かって事業をし、収益の一部を配当する仕組み。「オーナー商法」とも呼ばれる。磁気健康器具のオーナー制を展開した「ジャパンライフ」の破綻など大規模な消費者被害が相次ぎ、国は22年6月に預託法を改正した。販売預託商法は原則禁じられ、行うには事前に内閣総理大臣の確認を受けることが義務づけられた。
6人の逮捕容疑は法改正後の22年6~12月、内閣総理大臣の確認を受けずに関西地方の男女4人と計約218万円の販売預託契約を結んだとしている。府警は全員の認否を明らかにしていない。
府警生活経済課によると、チェンジ社は法改正前後、消費者庁から複数回にわたって事業内容の違法性について指摘されていたという。府警は池田容疑者らが違法だと認識しながら客から資金を集め続けたとみている。
チェンジ社は14年に設立。17年から再生エネルギーの発電・売電事業を始めた。事業は「ワットストア」と称し、太陽光発電を主力として風力発電にも進出。東北や九州など11道県で計約140の発電設備を稼働させていたという。
太陽光パネルなどの高額な発電設備を複数の希望者で共同購入(区分購入)する仕組みで、チェンジ社はスマートフォンの専用アプリなどを使って1口300円程度から購入が可能とPRしていた。年間の利率は約7~10%とし、「スマホで買える太陽光発電所」「誰でも簡単に太陽光発電所のオーナーになれる」などと呼び掛けていた。
環境問題への取り組みから、チェンジ社は20年に環境省の「グッドライフアワード」で実行委員会特別賞を受賞。同じ年には東北経済産業局が選定するスタートアップ企業(新興企業)にも選ばれた。
しかし、預託法改正から半年後の22年12月、事業を終了すると突然発表。23年2月に東京地裁から破産手続きの開始決定を受け、返金に関する相談が警察などに相次いでいた。【小坂春乃】