電動キックスケーターや電動アシスト自転車のシェアサービス「LUUP」(ループ)を展開するLuup(東京)と北九州市、毎日新聞社の3者は29日、市内でのサービス開始を機に連携協定を結んだ。毎日新聞社は報道を通じて、電動キックスケーターなどの交通ルール、マナーの普及啓発に取り組む。
「新たなモビリティーを通じて市民の足を確保し、経済活動を活発化させていく大きなチャレンジ。安全安心を確保しながら、可能性を追求していきたい」
北九州市役所で開かれた共同記者会見で、武内和久市長はこう力を込めた。北九州市は、その活用可能性を評価し、公共施設での専用駐輪場設置に向けた調整などを担う。
Luupによると、既に自治体との連携協定の実績はあるが、サービス開始時点で協定を結ぶ自治体は、北九州市が初めて。背景には、いわゆる「電動キックボード」と呼ばれる特定小型原動機付自転車を巡る交通ルール違反などが全国的に問題となっていることがある。
協定で、報道を通じて交通ルールやマナーの普及啓発に取り組む毎日新聞西部本社(小倉北区)の高添博之代表は「北九州市に根差した報道を続け、購読者数シェアナンバーワンと多くの市民に愛読いただいている。市民に安心安全に使ってもらえるよう尽力する」と語った。
Luupの岡井大輝社長は「街じゅうを『駅前化』するインフラをつくる」という企業理念を説明し「(北九州市の)街全体が生まれ変わろうとしているタイミングで、やりがいがある。駅から離れた場所にどうやって行くかという物理的な面で、土台を支えたい」と語った。
快適な乗り心地に「楽しい」声も
ループは、ポートと呼ばれる専用駐輪場に置かれた車両をスマートフォンのアプリを使って借り、ポートからポートへの移動ができる。1回50円の基本料金と1分当たり15円の時間料金(いずれも税込み)がかかる。
29日午前11時のサービス開始時点で、北九州市内のポート数は小倉北区中心部の17カ所(電動キックスケーター30台、電動アシスト自転車26台)だが、順次拡大する。
ポートのうち7カ所は、連携協定を結んだ北九州市が提供した場所で、北九州ソレイユホール(大手町)▽あさの汐風公園(浅野3)▽北九州市民球場(三萩野2)――など。市は市役所庁舎や勝山公園、モノレール各駅付近など、より便利な場所へのポート設置の検討を進めている。
ループの利用は、アプリ内で年齢確認書類の提出や交通ルールテストの全問連続正解が必要で、ルール違反を繰り返す利用者のアカウントは凍結される。
この日、Luupは勝山公園に試乗コースを作り、安全講習会を開催した。参加者は、原則として車道の一番左側の車線を走る▽右左折時はウインカーを使用▽飲酒運転禁止――などのルールや車両の操縦方法を確認。走行中は視線を上げるようにスタッフから助言を受けたり、快適な乗り心地に「楽しい」「速い」と歓声を上げたりしていた。
小倉北区の自営業、長久雅行さん(63)は「カーブを曲がるコツがつかめてよかった。駐輪場が増えれば便利なので利用したい」と期待した。【成松秋穂】