公道で自動運転バスの定期運行を行っている北海道上士幌町で、遠隔監視システムで完全無人運行ができる「自動運転レベル4」の実証試験が始まった。28日から11月末まで、役場周辺の町道で試験運行を重ね、安全性などを確認する。一般道路で「レベル4」のバス運行が試行されるのは全国初という。
町は2022年12月からソフトバンク子会社のBOLDLY(ボードリー、東京都)の協力を得て、乗車したオペレーター(操縦者)が交差点などでのみ手動操作する「レベル2」による自動運転バスを定期運行中だ。
今回は道釧路方面公安委員会の許可を受け、オペレーターが乗らない完全無人バスの実証走行に取り組む。
区間は町中心部の交通ターミナルから役場北側までの約600メートルで、バスは時速12キロ以下で走行する。バスの車体には障害物を検知する8個のセンサーが付き、歩行者の飛び出しなど危険を察知した際は自動停車する。
同ターミナル内の遠隔監視拠点ではバスの位置情報や車体周辺の状況、車内の様子がモニターに表示され、緊急時には監視員が駆けつける。
実証試験は週3日の各日2便で、誰でも無料で試乗し無人走行を体験できる。BOLDLYの佐治友基社長は「無人の車内で住民がどんな反応をするのか、その辺も確認したい」と話した。
実証走行を控えた25日には、関係機関や報道関係者を対象にした試乗会があり、路上に横たわったマネキン人形を自動認識し、バスが停車する様子なども披露された。無人車両を体験した竹中貢町長は「技術レベルの進歩を感じた。実用化に弾みがつく」と期待した。
町は高齢者らの移動手段を確保する公共交通として、自動運転バスの本格導入を目指している。将来の「レベル4」運行に向けた試験を行う一方、現状の「レベル2」の定期運行も同ターミナルを発着する市街地(走行距離約3キロ)と西方面(約5キロ)の巡回ルートに加え、28日からは東方面(約4キロ)の運行を開始し、利便性の向上を進めている。【鈴木斉】