和洋女子大(千葉県市川市)を運営する学校法人和洋学園の新大学院設置構想のため、職を辞すなどして集まった研究者ら6人が、突然の計画中止で雇用打ち切りを通告されたのは違法として、教授や講師としての地位確認などを求めた訴訟の判決が31日、東京地裁であった。中野哲美裁判長は、短期間の労働契約の成立や、学園側にプロジェクトを打ち切る裁量があることを認め、原告の請求を棄却した。
判決によると、新大学院構想は同学園の長坂健二郎理事長が2019年、宮坂勝之・聖路加国際大名誉教授を設置準備に誘ったのが発端。宮坂氏は20年4月に労働契約を結んでプロジェクトが始まり、宮坂氏が声をかけた医師や看護師、医療経済の専門家らが参加した。宮坂氏らは、医師と看護師の連携の緊密化を目指す先進的な看護大学院を目指して準備を進め、学園は21年3月に文部科学省に設置認可を申請。同5月、文科省から「警告」付きの審査結果が示されたことを受け、大学側は直後に認可申請を取り下げ、プロジェクトを終了させた。
訴訟では、原告側が「有期雇用とは説明されていない」などとして一方的なプロジェクト終了による雇い止めは無効と訴えていた。判決は「辞令に任期が明確に記載されている」などとして有期の労働契約が成立していたと判断。文科省が示した「警告」は同省が教育内容の見直しや変更を求めたもので「不認可」とは異なるが、判決は「明らかに厳しい意見である審査を踏まえプロジェクト終了を決定したのはリスクを避ける趣旨からも合理的」と認めた。さらに「プロジェクトは単独事業で原告らとの共同事業ではなく、中止判断は(学園の)裁量に委ねられるべきだ」として学園の判断に違法性はないとした。
原告側は判決を不服として控訴する方針。学園側は代理人弁護士を通じて「主張の正当性が認められた」とコメントした。【宇多川はるか】