熊本市の慈恵病院が開設している赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」の運用状況を検証する市の専門部会は31日、親が身元を明かさずに預け入れできる「匿名性」を巡って病院側から出されていた公開質問状に回答した。
匿名性には成長した子どもが出自を知る権利を損なう一面があり、専門部会は6月に出した第6期(2020~22年度分)の報告書で「最後まで匿名を貫くことは容認できない」と指摘。これに対し病院側は、赤ちゃんの命を救うために匿名性は不可欠だとして反発し、見解をただしていた。
回答書は「実名を告げなければ預けられない制度では、ゆりかごの存在意義はない」と匿名性を評価しつつも、出自を知る権利の重要性も指摘。「両者のバランスの取り方を(病院側と)一緒に検討できれば」とした。安部計彦・部会長は今後の報告書で「最後まで……」の表現をなくす可能性にも言及した。
慈恵病院の蓮田健(たけし)院長は「まだ見解に距離がある印象だ。(匿名性と出自を知る権利の)両立はそれほど容易でない」と述べた。ただ、一定の回答はあったとして追加の質問などはしないという。【中村敦茂】