4歳の女児らにタックルをしてけがをさせ、繁華街や市街地を逃げ回ったイノシシが31日夜、捕獲された。「イノシシを捕まえるには、手で捕まえられる度胸と、どう対処するかの判断力が必要だ」。駆除に当たった清水孝徳さん(70)=福岡県久留米市=が一部始終を語った。
「イノシシを体育館に閉じ込めているから、どうにかしてほしい」。清水さんの携帯電話が鳴った。相手は市の担当者。体長約1・5メートルの雌のイノシシが久留米市の繁華街を走り回り、4歳の女児と50代の男性の2人にけがをさせ、体育館に逃げ込んでいたのだ。
清水さんは市の鳥獣被害対策実施隊のメンバー。狩猟歴約30年のベテランで、これまでイノシシは何百頭も駆除してきた。
「皆が迷惑しているので、行かなければいけないと思った」。現場に着いたのは午後7時半ごろだった。イノシシは体育館のすみに座ったような状態でいた。
駆け付けた隊員は3人。早速、作戦会議を開始した。当初はヤリで駆除しようとしたが「子どもたちが使う体育館を汚してはいけない」と考え直し、2階から網を投げて動きを封じて捕まえる作戦に変更した。
だが、会議中にイノシシが舞台前に移動。上から警察官が長い棒を使って追い立てようとしたが、ほとんど動こうとはしなかった。
雌のイノシシはかみ付いてくることが多いというが「このくらいの大きさなら、どうかなるやろ(何とかなるだろう)」と決断。鉄パイプを使ってイノシシに脳しんとうを起こさせ、体育館の外に連れ出した後、処理した。
無事に駆除を終え「これ以上、逃げ回らんでよかった」とほっとしたという清水さん。イノシシは珍しい赤毛で肉質が良くて柔らかいといい、肉は家で食べるか、知人に譲る予定だという。【山口響】