日本郵便は1日、2025年用の年賀はがきを全国一斉に発売した。12月15日から受け付け、25日までの投函(とうかん)を呼びかける。10月1日の郵便料金値上げで通常の年賀はがきは63円から85円になった。印刷業者は「年賀状じまい」の加速に気をもむ一方、年賀状には「つながりの効用がある」と指摘する識者もいる。年賀状、どうしますか――。
「値上げもあり、迷いましたが……」。来年のえと「巳(み)」にちなんだ蛇の絵柄をあしらった年賀状が並ぶ福岡中央郵便局(福岡市中央区)で、南区から訪れたギャラリー経営、川野洋子さん(63)はそう明かした。枚数は減らしながらも毎年70枚ほどを出しているといい、「友人などから届くとホッとする。やめると寂しいのでやっぱり続けたい」。
年賀はがきの当初発行枚数は04年用の約44億6000万枚をピークに減少傾向が続く。25年用は値上げに伴う需要減を見込んで前年比約25%減の約10億7000万枚で、過去最大の減少率となる。日本郵便は25年用に選べるギフトを付けた新商品を導入するなど需要喚起を図るが、「本年をもって年賀状でのごあいさつを控えます」などとしたためて年賀状をやめる「年賀状じまい」に踏み切る人も多い。
年賀状印刷を担う業者は影響を受けそうだ。福岡市中央区の「西日本ビジネス印刷」は全国からの受注で例年15万枚前後の年賀状を印刷するが、園田慶一会長(77)は「今年はどれだけ減るか見当がつかない」。受注状況を見極めながらはがきを仕入れるつもりだ。
こうした中、年賀状の効用に着目する研究者もいる。高齢者の社会関係に詳しい武蔵野大の菅原育子教授(社会心理学)は「年に1回やりとりする程度でも、弱いつながりがあることは高齢者にとって大切」と指摘する。つながりを保ってさえいれば時間があったり同窓会の予定が入ったりした際にすぐ連絡し、助け合うこともでき、そうした選択肢を多く持つことは、深いつながりの知人が少数いるよりも本人の幸福感に強く作用するという。
「このご時世、関係を閉じることをよしとする流れがあるが、一気につながりを断つと、つながっていたかった人とも切れてしまう」と菅原教授。「年に1回、決まった時に決まった言葉でやりとりできるのは実はコストが安い。表現に悩まず、自分の近況を一言伝えてみては」と呼びかける。【山口響、平川昌範】