気象庁が8月に「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を初めて発表したが、20~30代の3割以上は発表自体を認識していなかったことが、野村総合研究所のアンケート調査でわかった。
野村総研は「SNS(ネット交流サービス)を含む多様な媒体を通じて情報を発信し、若い世代の目にも触れるようにする必要がある」としている。
連日の報道、若者には届かず
臨時情報は8月8日にあった宮崎県沖の日向灘を震源とする最大震度6弱の地震を受けて発表された。
「南海トラフ地震の想定震源域で、新たな大規模地震発生の可能性が平常時より相対的に高まっている」として、気象庁は同15日までの1週間、防災情報の確認や日ごろの備えの再点検を呼びかけた。
この間、東海道新幹線が一部区間で徐行運転をしたほか、域内沿岸部の特急の運休や、花火大会などのイベントの中止が相次いだ。備蓄用に水や米を買い求める人が急増し、一時はスーパーやホームセンターの店頭から商品が消えた。新聞やテレビは連日、関連ニュースを報じた。
調査は9月、20~80代の5万人を対象にインターネットを通じて実施した。
臨時情報が発表されたことを知っているかどうかを聞いたところ、全体の4人に1人にあたる24・2%が「知らない」と回答。中でも20代は36・0%、30代は31・8%と、若い年代ほど認知度が低かった。70代以上は9割弱が「知っている」と答えた。
年代が高いほど臨時情報に「無関心」
また、「知っている」と答えた人のうち約5000人に発表の受け止め方などを聞いた。
情報源はどの年代もテレビが1位となったが、2位は20代のみSNSで、30代以上はいずれもインターネットだった。3位は、20代がインターネット▽30~40代がSNS▽50代以上が新聞――となった。
発表時に抱いた感情を「不安」「驚き」「疑問」「無関心」など10種類の中から複数回答で尋ねたところ、「不安」が全年代で最多となり、全体の65・0%に上った。
一方で、20代と30代で「不安」と答えた人はそれぞれ70%を超えたが、60代と70代以上は50%台にとどまった。これと連動するように、「疑問」「無関心」を選ぶ人の割合は60代と70代以上で多くなった。
発表を受けて取った行動については、全体の43・7%が「特に何もしなかった」と回答した。こちらも年代が上がるほどその割合が高くなり、20代が34・0%だったのに対し、70代以上は50・2%と半数に上った。「地震や臨時情報について調べた」と回答した人は20代が41・9%で、60代と70代以上はともに10%台だった。
野村総研シニアコンサルタントの橘和香子さんによると、情報を得ていても高齢者や独り暮らしの人は懐疑的だったり無関心だったりする傾向がみられたという。
簡単で具体的な対策の発信を
橘さんは「国から『日ごろの備えの確認』を求められても、日ごろから備えていない人は何をしていいかわからない。例えば、(避難を想定して)『パンプスではなく運動靴で』など、行動指示はシンプルで具体的にすべきだ。企業などの組織は誰も取りこぼさずに守るための防災対策に動いてほしい」と話している。【太田敦子】