新型コロナウイルス感染症対策の一環として創設された「地方創生臨時交付金」を巡り、不正受給をした検査業者などに対して国庫への返還を求めていた205億円余のうち、少なくとも170億円が未返還であることが判明した。会計検査院が6日に公表した2023年度決算の検査報告で指摘した。内閣府や総務省が把握していなかった分もあり、検査院は返還に向けて適切に対応するよう求めている。
交付金は20~22年度、感染拡大防止策や生活支援など、使途を自治体に委ねる形で交付され、総額18兆3259億円に上った。そうした中、PCR検査や抗原検査の件数水増し、時短営業の偽装などによる不正受給が全国で相次いで発覚し、自治体が返還を請求する事態となっていた。
検査院は今回、能登半島地震で被災した石川と富山、新潟の3県を除く44都道府県について返還状況を調べた。その結果、23年度末時点で170億4947万円が未返還と確認された。
対象事業の内訳は、検査件数などに応じて検査業者に支給された「検査促進交付金」が150億4063万円と最も多かったほか、時短営業に応じた飲食店などが対象の「協力要請推進交付金」が9億9502万円、感染防止から事務費まで幅広く対応する「事業者支援交付金」が1928万円。金融機関から融資を受ける中小企業などの信用保証料を自治体が補助し、企業が早期返済(繰り上げ償還)したことで過払いとなった分の未返還なども9億9453万円あった。
総務省は「未返還の大部分は検査の不正受給に関わるもので、検査業者から返還されるかの見通しは説明が難しい」としている。
検査院は6日、コロナ交付金の未返還を含む23年度決算の検査報告を石破茂首相に手渡した。国や自治体による不適切な経理や税金の無駄遣いなど計345件(計648億円)を指摘。田中弥生院長は手渡し前に開いた記者会見で「検査結果は社会活動や日常生活に影響する。国の予算編成の審議に役立ててほしい」と述べた。【渡辺暢】