米国民は、過激な発言をくり返してきた前大統領の再登板を選んだ。米大統領選でドナルド・トランプ氏(78)が当選を確実にした6日、広島・長崎の被爆者や米軍基地を抱える沖縄からは、核軍縮や米中関係の先行きを懸念する声が上がった。
沖縄県には全国の米軍専用施設面積の7割が集中し、米国の安全保障政策や基地運用は住民生活にも大きな影響を与える。安全保障に詳しい沖縄国際大の野添文彬(ふみあき)教授(国際政治学)は、トランプ氏が大統領に就く新政権について「中国に軍事的に対抗するため、沖縄での自衛隊の役割の拡大を日本に求め、日米の共同訓練も強化していく路線を維持する」として、沖縄県が求める基地負担軽減に大きな進展は期待できないとの見方を示す。
2016年の大統領選で、トランプ氏は在日米軍を撤退させる可能性に言及。当選後に沖縄県の翁長(おなが)雄志知事(当時)が祝電を送るなど県内では基地負担軽減に期待する声が上がったが、実際は大きな変化はなかった。野添氏は「当時は県側が誤解した。トランプ氏としては、在日米軍の駐留経費の負担増を日本に求めることに主眼があり、『撤退』は交渉戦術上のブラフ(威嚇)だった」と振り返る。
野添氏は17~21年のトランプ政権以降、米国は「大国間競争」を前提として軍事的な対中戦略に力を入れるようになったとし、「トランプ政権下では経済面の競争と軍事的な対立が絡み合い、エスカレートする可能性がある」と懸念。東アジア情勢が不安定になれば、沖縄は軍事的にさらに重要視され、基地負担の軽減は遠のくと指摘する。
玉城デニー知事は18年の就任以降、繰り返し訪米し、連邦議員や政府関係者らに基地負担軽減を直接訴えてきた。野添氏はこうした地域外交の取り組みを評価した上で、「民主党左派が相手なら人権の観点から基地問題への関心を高められるが、共和党政権には沖縄に基地が集中することの脆弱(ぜいじゃく)性や兵力分散化の必要性を訴えるなど工夫が求められる」と述べた。【比嘉洋】