福岡市の合同会社「ボタン」が、西日本鉄道の駅や列車の忘れ物の傘をリメークしてエコバッグなどを作る取り組みを始めた。ボタンは、障害者が社員として働きながら技能を身に付ける就労支援事業所で、担当者は「個性豊かな商品を購入してほしい」と呼びかけている。
傘の生地を使ったエコバッグ作りをする作業は5カ所で分担している。裁縫を担当する店舗の一つが、ボタンの親会社が経営する福岡市中央区のクリーニング店。5日には、店の奥の作業スペースで、ボタンの社員3人が施設外就労として、好きな生地を選んで布の大きさをそろえ、ミシンを使ってエコバッグを作っていた。ズボンの裾上げなどの通常業務もあるため、月にできるエコバッグは10~15個程度だ。
女性社員(64)は「この会社に入って4カ月。失敗して何度もやり直したが、作るのは楽しくやりがいがある」。別の女性社員(39)は「傘のデザインを生かし、好きな色を組み合わせて作っています」と話す。
忘れ物の傘を使ったエコバッグ作りのアイデアを思いついたのは、ボタンで障害者の支援計画を作るサービス管理責任者、垣田大州(おおしゅう)さん(52)。駅や列車の忘れ物は、遺失物法に基づき警察に届け出た翌日から2週間以内に落とし主が見つからなければ、廃棄・売却できる。垣田さんは、廃棄される傘を有効活用できないかと考え、知人を通じて西鉄に協力を依頼し、就労機会の創出の一環として無償で傘を提供してもらえることになった。
西鉄によると、天神大牟田線と貝塚線では年約1万9000本(2023年度)の忘れ物の傘があり、持ち主が見つからずにその75%を捨てている。ボタンは7月以降、天神大牟田線西鉄福岡(天神)―春日原間で収集された廃棄予定の傘を受け取り、20~60代の社員延べ15人でエコバッグなどを作っている。親会社が運営するサイトでエコバッグ1個1100~1650円程度で販売する。
ゼロからミシンの使い方を覚えた男性社員(38)は「今は仕事をこなすことでいっぱいだが、もっとできるようになれば他のものも挑戦したい」と意気込んだ。垣田さんは「捨てられてしまう傘をリメークすることで、利用者さんの給料となり、やりがいになればいい」と語った。【下原知広】