愛媛県唯一の離島自治体・上島町(かみじまちょう)。その島々を民俗学者、宮本常一(つねいち)(1907~81年)が訪れ、人々の生活、習俗や信仰を多くの写真に収めていた。生涯の大半を旅にささげた宮本が残したカットから昭和の生活に思いをはせ、これからの地域の在り方を考える写真展「民俗学者 宮本常一が歩いた上島町」が、同町で開かれている。
著書「忘れられた日本人」で知られる宮本は山口・周防大島町生まれ。日本列島をくまなく歩き、人々が生きる姿を記録した。その際、重視したのが写真だった。1955(昭和30)年から81(同56)年までに約9万~10万枚を撮影し、高度成長で変貌する景観や生活文化を隅々まで記録した。
今回の写真展は、同町内で空き家問題の改善や地域の活性化を目指すNPO「かみじま町空き家よくし隊」が公益財団法人「日本離島センター」の助成で開催。現在の同町の島々のうち、宮本は57年に岩城(いわぎ)島、弓削(ゆげ)島、生名(いきな)島、77年に魚島(うおしま)を旅した。郷里の周防大島文化交流センター(宮本常一記念館)には、この時に宮本が撮影した約100点の写真が残っている。このうち約30点を立石港務所(生名島)で18日まで展示。21~25日には魚島地域交流施設(魚島)で約10点を展示する。
小舟で働きに出る人、座って作業を行う女性たちなど、いずれの写真からも当時の生き生きとした生活の姿が伝わる。「よくし隊」の事務局を務める平田浩司さん(52)は「過去の暮らし、日々のなりわいを改めて見つめ、次代を考える機会にしていただければ」と話す。入場無料。問い合わせは平田さん(080・1453・0360)。【松倉展人】